休日には、





朝日が差し込んで、ほんのり明るくなる部屋。
朝日が運んできたのは休日。


「―ん…」


隣で聞こえた寝息。
重たい瞼を開けて、小さく微笑む。

休日は、隣に貴方の寝顔がある。


『…お早う、阿近さん』


寝不足と栄養不足で常に顔色の悪い彼を、一番傍で支えたかった。
唯それだけ。

私は眠っている阿近さんを起こさないように、なるべく物音を立てないように気を付けながら布団を出ようとした。


「―…何処に行く」
『え…きゃ…っ』


そんな私の手首を、阿近さんの寝起きでさえ冷たい大きな手が捕えた。
そのまま引っ張られ、もう一度布団の中に戻される。


『あ、阿近さ…』
「人がまだ寝てるのに、お前は何処に行こうとしてんだ」


寝起きの掠れた声が耳元で響く。


『何処って…朝ご飯を…』
「…要らねェ…」


―…お前を喰いたい。


甘い甘い声でそう囁く阿近さんの言葉に、私は思わず赤面する。


『朝から何言ってるんですか』


慌てて離れようとすれば、逃げる私の腰を掴む。


「仕事で疲れて帰ってきたのに、誰かさんはよだれ垂らしながら寝てんだもんな。
立派な御身分だこって」
『よ、よだれなんか垂らしてないです!』
「俺が舐めたからな」
『!』


阿近さんの眠そうな瞳に映る私は、これでもか、というほど顔を赤くしていて。
そんな顔を見られているのが恥ずかしくて下を向いた。


「こっち向けよ…



なまえ」


…狡い。
低く、甘いその声で。
私の名前を呼ぶのは卑怯。


私はおずおずと上を向いて。
そうすればそこにあるのは不敵な笑みを湛えた阿近さんの顔。


阿近さんは私の顎を掴んで、そのまま唇を塞いだ。


『ッふ…』
「ご無沙汰なんだ。
楽しませろよ?」


にやり、と笑うその表情は鬼そのもので。
鬼畜、と呟けば、褒め言葉だと笑われた。

そうして、また、障子の隙間から零れる朝日の中でキスを交わした。


『…ん、』


唇を塞がれ、酸素の出入りが制限される中。
その甘さと苦しさに眉間に皺を寄せる。

阿近さんの唇は、そのまま頬や額を滑り、私の耳に辿り着いた。
ちゅっとリップ音を響かせ、私の耳に優しくキスをする。


『ぁ…』


小さく声を漏らせば、満足そうに微笑む阿近さん。


「なんだ、随分敏感なんだな」
『ち、違います…!』
「口は素直じゃねェな」


クスクスと笑いながら、宥めるように耳を愛撫する。
舌が耳の輪郭をなぞり、くちゅくちゅと水音が鼓膜を直接揺らす。


『ん…ふ、ぁ…』


ぴくぴく、と小さく痙攣する体を抱き締めながら、阿近さんは舌で首筋をなぞる。
ぞくぞくと背筋を何かが走る。
首筋に阿近さんの冷たい唇が押しあてられて、そのまま強く吸われた。


『ッあ、そこ…見えちゃう…ッ』


そう言ったときにはもう遅くて、紅い華が咲いた。


「見せとけ。お前は俺のモノなんだから」
『意地悪…』
「嬉しいくせに」


何を言っても阿近さんに敵わない。
分かってはいても、反抗せずにはいられない。
素直じゃないこの口が憎い。


阿近さんの冷たい手は私の腰紐を解いて、ゆっくりと肌を露わにしていく。
襦袢を肌蹴させて、覗いた白い肌の上を阿近さんの手が這い回る。


胸の飾りの周りを、指先でくるくるとなぞり、時々思い出したかのように飾りを弾く。


『ッあ…』


ビクッと体を揺らす私の首筋を執拗に舐め回す。
気持ち良さと恥ずかしさに、思わず涙がこぼれる。


やがて阿近さんの舌も移動していき、胸の桃色の飾りに辿り着く。


『や、ぁ…』


ころころと舌先で転がされ、突かれ、時々温かい舌で包まれる。
飾りを唇で挟み、吸い上げられれば自分の声じゃない声が響く。


『ひぁ…ッハァ…』
「なまえ、これ好きだよな」


そう言って阿近さんは飾りを交互に舐め、私の性感を高めていく。
阿近さんの少し骨ばった指が内腿へと伸びていき、脚の付け根の部分をくすぐる。


『あ、やだ…ッそこ』
「聞こえねェ」


きっぱりと言い捨てて、阿近さんの指がナカに入ってきた。


『あ、ぁあ…!』
「…随分濡れてるな」
『だ、って…ッハァ』
「だって…?
何だ、続き言ってみろよ」


至極楽しそうに笑う阿近さんは、悔しいけどとても綺麗で。
端正な顔立ちに、くらくらする。


『阿近さんの意地悪…』


潤む瞳で睨めば、逆効果だな、と笑った。


「そんな顔しても、俺を煽るだけだぞ」


蜜口に阿近さんの脈打つソレが宛がわれた。
欲しかった刺激を求めてか、私のナカが収縮するのが嫌でも分かる。

でも、そんな私の心情を察したのか阿近さんは悪戯っぽく笑った。


「まだ、やらねェよ」


おねだりがまだだろ?と言って、阿近さんは猛るソレを私の蜜口に擦りつける。
一番太い部分が入口に僅かに引っかかる。
入りそうなのに、挿れてくれない。


なんてもどかしいんだろう。


こんなにも貴方を求めているのに。
熱はすぐそこにあるのに。


ぐちゅぐちゅと、卑猥な水音が耳を犯す。
余裕の無くなってきた阿近さんの息遣い。

熱と欲

乱れて、淫れて

混ざり合って
かき回して


お願いだから


『ッ…挿れてぇ…』


貴方のモノで、犯してほしい。


「ッ上出来だ」
『ッあぁあああ』



ズン、と突き上げられたその衝撃に、私は達してしまった。


「なんだ、もうイッたのか?」
『ぁ、ッ…待って…まだッ』
「勝手にイッたくせに、口答えか?
お仕置きだな」


何時もよりも声に余裕がない。
きつく閉じた瞼を開けて、その表情を確認するには気持ちよすぎるから。
声と、その息遣いで。

貴方が私を求めてくれていることを感じる…



『ッあ、阿近さ…っ
激し…ッハァ…あっ』
「くッ…キツイな、お前のナカ…ハァ…」


私のひざ裏を抱えて、深く、深く入ってくる阿近さんの熱。
内壁を巻き込み、蜜壺をえぐって。
奥へ、奥へと貴方が侵入してくる。


結合部から聞こえる卑猥な水音と、対照的な肉と肉がぶつかり合う乾いた音。
声にならない声だけがうるさくて。


『ん、ぁ…ッ
阿近さん…、阿こ…さッ』
「―…ッハア…なまえ…」


両手を伸ばせば、応えるように私に覆いかぶさる阿近さん。
その背中に手をまわして、温もりを包み込む。
阿近さんの吐息が唇に触れる。


「なまえ、キス…」


そう促され、私は少し顔を上に上げれば阿近さんの唇に捕われた。
噛み付くようなそのキスに応えながら、手探りで掴む快感の糸口。

舌を絡ませて、指を絡ませて、脚を絡ませて。

貴方と離れたくない、と。
体全体が叫んでる。



『ッ阿近さん、好き…っ』


頬を涙が伝う。
その雫を阿近さんの舌先が舐めとる。


「俺もだよ…ッハァ…」


愛してる。


耳元で囁かれたその言葉に、私は頷いて。

阿近さんの律動が早まる。
その度内壁を擦られて、生まれるのは熱と快感。

ズチュッ…グチュッ…

阿近さんのモノが引き抜かれ、突き上げられる度響く水音。


『あ、ぁああッ…う、あ…っ』
「なまえ、出す…ぞ…ッ」
『や、やぁあッ
壊れちゃ…う、…ッハァ…』


壊れちまえよ、と落ちてきた言葉は、狂ったように啼く私の耳には届いてなくて。
その言葉に、阿近さんなりの愛情が含まれているのにも気づかなかったけれど。

それでも、好きだと何度も降らせてくれたキスの雨に、優しさが沢山詰まっていたから。
私はそれだけで嬉しくて。


『ッあ、も…イ…っちゃう』
「ああ…イけよ。
ほら…ッ」
『あ、ああぁあぁあっ』
「……ッ」



ドク…ン・・!


私の中に熱い欲望が注がれて、阿近さんのモノが脈打っていて。
それをまどろむ中で感じながら、私は瞳を閉じた。

瞳を閉じた私の額に、阿近さんがキスを落としてくれた。



『―…好き』


微笑むと、其処には優しく笑う阿近さんが居て。


「知ってる」


ただそうやって不敵に笑ってキスしてくれるから。
もう貴方なしでは生きていけない、なんて思っちゃうんだ。


休日には、

隣に貴方が居て

朝日が眩しくってさ。

甘い言葉を囁いてくれる。



唯それだけで、幸せだから。







日には、
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貴方の寝顔を見て、細く笑む。


(お前、いい年して涎垂らすなよ)(た、垂らしてないもん!)

12.04.14.22:49



 

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