泣き顔と嫉妬と約束





『グ……ッ』
「あ゙?」


背後から聞こえた、嗚咽を含んだ声に振り向けば、群青色の瞳に零れそうな程涙を溜め込んだ女。


『グリムジョーッ』
「Σおわッ!!」


走ってきたそのままの勢いで突撃される。
コイツ、自分が破面だって事、忘れてんじゃねえか?
幾ら俺が十刃でも、痛えモンは痛え。


「…はァ………
で、どうしたんだ。
なまえ……」


仰向けに倒れた俺の胸に、顔を埋める女の髪を撫でる。

コイツは泣く時だけ、俺の元にやってくる。
普段は何処に居るかって?
そんな事、俺の口から言えるかよ。


『うぅ…ッ…ウルがね、酷いのッ』


また、ソイツか。
俺は唯黙って話を聞いていた。
それが優しさなのか、と聞かれたら、俺はNOと答える。
俺が黙ってコイツの話を聞くのは、唯の俺の嫉妬に過ぎない。


『……でね、……ッ』


そんな俺の嫉妬を優しさと受け取り、存分に泣く名前。
だから俺は、優しいフリをする。
そうすれば、コイツはまた俺の所に来るから。


『……ッ酷いでしょ?!』
「……そうだな」


ひとしきり泣き、ひとしきり愚痴を零した後、濡れた瞳で俺を見上げ、同意を求める。
そしたら俺は、そうだなとしか言い様が無え。
本当はこのまま抱き締めて、連れ去りたいくらい、お前が好きなのに。


『…ぅう……何時もごめんね、グリムジョー……』
「はッ…今更何言ってんだよ」


なまえはやっと俺の上から退いた。
俺も上半身を起こして、なまえと向き合う。

そう、今更だ。
今更謝られて、今更無かった事にされても嫌だ。

もう、俺の元に来ない。と宣言されたも同然だ。

なまえが笑うのは
俺の前じゃ無え。

でも、お前の泣き顔を
知ってるのは俺だけだ。


俺だけで良い……




「……そんなに泣く位だったら、別れちまえば良いのに…」


これは本音。
別れて
泣いて
俺の所に来たなら
俺はお前を奪い去るのに。


『……でも………』


そう呟いて、俯くなまえ。

知ってる。
お前がアイツを
どれだけ好きか、なんて。
俺が一番良く知ってる。

俺の言葉が虚しく宙を漂うだけ。


「……分かってるよ。
なまえはアイツの事…
好きだもんな…………」


そう、俺じゃない。

自分の言葉が、こんなにも俺自身を突き刺す。
痛い、痛い。


『……うん………』


ほら、頷く。
お前の気持ちに
俺が入り込む隙間は無い。




俺は右手をなまえの頭の上に置いた。
そして少し乱暴に撫でた。
なまえの髪はぐちゃぐちゃになる。


『ちょ…ッ…何すんのよ、グリムジョー』


白い頬を膨らませて、俺を睨む。
その瞳に殺意なんてこれっぽっちも無いけど。


「お前が良いなら、それで良いんだけどよ……」


俺は立ち上がり、なまえに背を向けた。


「唯―………
























一人で泣いたら
許さないからな」


お前の涙を
受け止められるのは
俺だけだ






泣き顔と嫉妬と約束
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本当は笑顔が見たい、なんて死んでも言わない。


(一人で泣かれるより、傍に居てくれ)

11.05.27.09:51



 

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