躓いたのは、言葉





時間は流れる。
時がボクの味方なら。

せめて、この恋を
忘れさせて。




手を繋いで歩いた。
夕日が傾く頃。
長い二つの影は、真ん中で結ばれて。

あと、少し。
ボクが君の事を愛せたなら。



『市丸隊長、見て下さいッ
トンボですよ』
「赤とんぼやねェ。
ああ、夕日に重なって綺麗や」




他愛ない事に喜んで
下らない事で笑って

そない君は…
なまえちゃんは、今何処に居てるんやろう。



『あ、流れ星!』
「ほんまやね」
『隊長、ちゃんと願い事しましたか?』
「……勿論や」



そう、なまえちゃんとずっと
一緒に居れる様に。

願った流れ星は
願い乗せたまま、夜空の果てに消えた。



『市丸隊長、知ってました?
蝉って一週間しか生きれないって。
だから、ああやって必死に鳴くんですよ。
人生、悔い残したくないですもんね』
「…まァ、若干煩い気ィもするけどな」
『そんな事言ったら、蝉が可哀相ですッ』



ああ、ボクも今、必死に鳴けば
なまえちゃんは戻って来るやろか。

春夏秋冬。
なまえちゃんと手を繋いで歩いたこの道。

君は、なして……

あの時、躓いたのは
言葉が、気持ちか。



『―……隊長…
あたしの事、愛していないでしょう?』



何故、そう思ったのか。
あの時直ぐに、愛していると答えれば、なまえちゃんはまだ此処に居たのか。

愛していた
愛していなかった訳が無い。

唯、あの時。
君の質問が唯胸に突き刺さった。

ボクはなまえちゃんを
心から愛していたのに。

それが伝わってへん。
それが、哀しかった。


なまえちゃんの大きな瞳に、溜まった涙が零れない様に。
どないしたら良えのか、考えていたらその涙は呆気無く頬を転げ落ちた。






































さ よ う な ら 




ああ、君が居なくなる。


君以上、愛せる人はこの世に居てへんのに。
君は今ボクの傍に居ない。

なして、あの時言葉に躓いたのか。

愛していたのに。

なまえちゃんの涙は、簡単に零れた。
その涙を止める方法を、ボクは知っていたのに。


さようなら


その言葉が、今でもボクを苦しめる。

もう一度、この腕に君を。
取り戻したい、あの温もりを。





手を繋いで歩きたい。

今度は、躓かへん様に
なまえちゃんの瞳を見つめて
心の底から










愛してる














そう、伝えたい。

もう、何もかも
遅いけど。







躓いたのは、言葉
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唯一言に躓いて君を失った


(市丸さんの失恋物語)

11.06.05.00:47




 

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