瞳
『ウルキオラ、藍染様が呼んでたよ』
「……そうか、分かった」
ウルキオラと呼ばれた男は、カツカツと靴音を響かせながら廊下の向こうへと消えていった。
無機質な廊下に残されたのは、耳まで赤くした一人の女。
「よォ…なまえ」
『……ッノイトラ……』
ハッと我に返って、俺を見つめる。
驚いて揺れる瞳。
俺と同じ、黒く長い髪。
お前に触れてえ、と。
思い始めたのはずっと前。
お前を目で追いかけていたら、要らない事まで見えてきた。
「……ああいう男が好きなのかよ」
『ッノイトラには関係無いでしょ!』
そう言い放ち、俺から目を逸らす。
「ヒャッハァ!
それは認めたも同然だなァ?」
『煩い、ばーかッ』
なまえは踵を返して、俺とは反対方向に走って行った。
本当はこんな事が言いたい訳じゃ無えのに。
どうやってお前と付き合えば良いのか、分からない。
俺を見ろ
俺を呼べ
俺を頼れ
俺を好きになれよ……
お前の瞳は、俺に向けられたモノじゃ無い。
瞳
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俺だけを見てほしいなんて、寒気がする
(でも、それが本音)
11.05.27.15:20
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