泣き虫な女は大抵鈍い





「―…なまえ…か?
お前、こんな所で何して―…」
『ッ…グリムジョー…』
「Σ!? おま―…」


虚夜宮の長い廊下。
その隅に丸くなっていた人物。

破面No.23のなまえ。
細い肩は震えていた気がした。


俺の存在に気付いたなまえは、俺が何か言う前に走り去った。

ああ、また ア イ ツ か。

俺は響転で、虚夜宮の端っこの方に有る庭園へと先回りした。
名前は何時も、何かある度に其処に居る。

なまえの行動パターンは、単純過ぎる。




―ザッ…


この無駄に広い虚夜宮の端っこに有る、忘れ去られた様な庭園。
東仙が世話してるっつー花が咲き乱れる。
水さえ無いこの世界で、どうやって此処まで花を育てられたのか不思議でしょうがない。

俺は、庭園の中の白いベンチに腰を下ろした。



三分程して、予想通り名前がやってきた。
大きな瞳を濡らしながら。


『!!』
「よォ、なまえ」


庭園に入り込んだなまえ。
現世で見た事の有る、不思議の国のなんちゃらと、一瞬だけ被って見えた。


『ど、どうして……』


辛うじて瞳に溜まったままでいる液体。
その正体を、俺は嫌という程知っている。


「どうして?
可笑しな質問をしやがる。
てめえは行動パターンが単純過ぎンだよ」


ハッと鼻で笑えば、拗ねた様に頬を膨らませる。


『じゃあ、次からは場所変えますー
ご忠告どうも!』


べぇッと舌を出して笑う。



今にも泣きそうな顔で。


何で
どうして

てめえは何時も……

あんな奴の


「……ノイトラの何処が良いんだよ」


俺の質問に、なまえは目を伏せた。
悪戯っぽい瞳は、今や完全に白い砂漠を見つめている。


「そんで…
てめえは何でそんなに
泣きそうな顔で笑ってんだよ」
『……ッ』


俺の一言がきっかけの様に
なまえは泣き出した。



『う…ッ…うぅ…ッ』


ぽろぽろと、大粒の涙を零す。
俺はベンチに座ったまま、泣きじゃくるなまえを見上げていた。


『ッ…んで…つも…』
「あ゙?
何言ってるか解ンねえよ」


嗚咽を漏らしながら喋る名前。


『ッ…なんで何時も…ッ
気付いてくれるのがアンタなの…』


ぐしぐしとしつこく泣く。
白い綺麗な手の甲で、一生懸命涙を拭う。
俺は立ち上がって、なまえと向き合った。

俺が長身だからか、なまえが小せぇからか。
俺は前屈みになって、顔を覆うなまえの細い腕を握った。
そしてゆっくりと顔から引き離す。


『…ッやだ、今…
顔見られたくない』


腕を離されそうになり、それに抵抗を見せるが、俺の力に勝てる訳も無く、ゆっくりと腕が離れる。


「何で俺が気付くかって?
てめえは何も解っちゃいねェ」
『……?』


ボロボロ、止まる事を知らない涙。
白い頬を転がり落ちていく。



そう、なまえは何も解っちゃいねェ。

俺がどんな気持ちで此処に居るかも
俺がどんな想いでお前を見ているかも
俺が何で、お前の涙に気付くのかも……


「何時も、お前を見ているからだろうが」


なまえは暫らく思考を停止した。
そして言葉の意味を理解すると、一気に顔を赤くした。


『ッッ…!!
な、何言ってんのよ、馬鹿!!』
「ははッ…涙、止まったな」
『Σ!!』


口角を上げて笑って見せれば、からかわれた、と眉を顰める。
そんな表情を、愛しいと思ってしまう。


『か、からかったの!?』
「別にからかっちゃいねえよ」
『それって―…?』
「涙止まったんだ。
俺の役目は終わりだな」
『ちょ…グリムジョー!』


さっさと庭園を出て行こうとしようとする俺。
その後を追いかけてくるなまえ。

俺はちょっと自分の言葉に後悔して、響転を使った。


どうせ、明日もアイツは此処に来る。
今日とは違い、少し頬を赤くして。

そしたら明日からは
アイツの隣は俺になる。

そしたらもう二度と
アイツの瞳は濡らさない。


アイツの泣き顔は
今日で見収め。







泣き虫な女は大抵鈍い
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(昨日の結局意味分からなかったんだけど)(…鈍過ぎだろ)


(ストレートに言葉にするのが苦手なグリと鈍感娘)

11.05.23.22:56



 

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