キスなんてもんは、





キスなんてもんは

そう、キスなんてもんは


--------------------


「なまえ」

『何?』


俺は従属官のなまえを呼んだ。
俺とは対照的な、白銀の長い髪を揺らし、なまえは振り向いた。

こいつの澄んだ青色の瞳に囚われてから、俺はどの位経っただろうか。

俺の鎖に縛られたこの心を、なまえは知らない。





淡いピンク色の薄い唇
そこに、触れたい……





「―…茶」

『? はいはい』


思わず見惚れていた自分に呆れた。


「はっ…阿呆らしい」


底の見えない暗闇に
突き落とされた気分になる。


『はい、お茶』


差し出されたカップから、湯気が立つ。
紅茶の薫りが、鼻をくすぐる。

俺は黙ってカップを受け取った。


ちゃっかりなまえも自分の分のお茶を用意していて、俺の向いに座って両手でカップを包み込んでいた。


『―…ねェ』

「あ?」


不意になまえがカップから口を離し、俺に近付いてきた。
座っている俺
立ち上がったアイツ。

俺の視線は自然と上を向く。
見上げた其処にあったのは











淡いピンク色。



「Σ―……ッ!!?」


気が付けば、俺の酸素の出入り口は塞がれていた。
柔らかい、アイツの薄い唇によって。


ダージリンの薫りがする。


「ッてめ…何のつもりだよ!」


やっと解放された口が言い放った言葉。
なまえは唯、不敵に微笑んで


『キスは奪うモノでしょう?』


ニヤリ、と笑って見せた。

何時かの自分の台詞を思い出す。




『ねェ、ノイトラ様』

「あァ?」

『キスって……
どう思う?』

「はァ?」



訳の解らない質問。

俺はその時、唯々眠くて


「さあな…
唯、キスなんてもんは
奪ったモン勝ちだ」

『ふぅん……』





= キスなんてもんは
奪ったモン勝ちだ =




『ノイトラ様、あたしの事、好きでしょう?』


どっから沸いて来るんだ、その根拠は。
そう言ってやりたかったが、赤面を隠す為に俯いた俺に、成す術は無かった。


「―…だったら何だよ」


逆ギレも良いトコだ。
でも、なまえは唯笑っている。


『あたしも同じ』





―…なんてことった。

唇だけじゃなくて
心までも
お前に奪われた―…




キスなんてもんは、
--------------------
奪ったもん勝ち、敗者は俺。


(強気なノイトラが負けるのが好き)

11.05.22.13:55


 

[back]


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -