prologue [ 25 / 33 ]
『い、嫌…ッあ』
「ハァ…なまえ…」
『ヤ、だよぉ…
ッい、いたあぁあああいッ』
「―…ッ!!」
ビクンッと揺れた体。
湧きだす汗。
思わず開眼して目を覚ます。
上体を起こし、窓の外を見遣る。
嫌や…
なして、最近…こない夢ばかり見て。
朝日が昇るには、まだ少し早い。
真っ暗な部屋に響くのは自分の呼吸音と、内側から響く鼓動。
耳元で鳴っているみたいに、激しく、大きく。
自分の心臓が跳ねる。
夢、そう、夢。
現実に起こり得ぬ夢。
全てがリアル過ぎて、生々しい。
現実と夢が混じってしまいそうなくらい…
吐息も汗も温もりも。
声も感触も、全部。
「―…なまえ…」
片膝を立て、肘を乗せて掌で額を支える様にして項垂れる。
小さく呟いた、愛しき人の名前。
決してこの手に入る事の無い人の名前。
誰よりも、誰よりも。
狂おしい程愛しいのに。
一番近くて、一番遠い。
君は、君は。
ボクの妹―…
prologue
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誰よりも愛しいのに、何で―…
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