笑、時々暴力





、時々暴力


これが最後の恋や、て。
本気で思っとった。

繋いだ手を離す時。
それはボクか君が死んだ時。

君の白く小さい手を
ボクは離さへんと決めた夜。

綺麗な綺麗な満月の夜。

夜桜が綺麗に映える、濃紺の空…





夜桜に攫われた
ボクの恋人―…






「名前」
『あ、朽木隊長。
お早うございます』
「兄は今日も早番なのか?」


凛とした声が、隊首室に響く。
その声は、隊首室に居る最高権力者である隊長のボクやなく、三番隊第三席の彼女に向けられていた。
それに対して笑顔で応える彼女は、ボクの恋人。
彼女の綺麗な長髪。濃紺の緑。
白過ぎて触れるのも躊躇われる肌。
その全てが、ボクのもの。


『はい、隊長が最近朝早いので』
「…市丸が朝早いのと兄が朝早いのと…どう関係あるのか、知りたいものだな」


厭味っぽい低い声と、全てを見透かしたような真っすぐな瞳が、やっとボクに向けられた。


「はて…何のことやら」


それをボクは得意の笑顔で返す。


「そないな事よりも、六番隊長さん。
なしてこないな所に居てはるんですか?」
「…兄に書類だ」


素っ気なく渡された書類。
隊長格が配達しなければならないような、重要書類でもないのに。


「そらァ、おおきに。
名前ちゃん、これ宜しゅう」
『はい、畏まりました』


ボクにも明るい笑顔で対応する名前ちゃん。
大きな瞳が、少し細なって、目尻がくしゃっとなるその笑顔が、ボクは大好きやった。


「ほな、お引き取り願いますやろか、六番隊長さn-ッいだ!!」


突き離す様にそう言えば、突然後頭部に痛みが走った。
振り向けば、相変わらず笑顔の名前ちゃん。
その両手には凶器(お盆)があり、ボクの後頭部の痛みの原因を理解した。


「何すんの、名前ちゃん!」
『朽木隊長に失礼な態度取るからです!』
「な…ッ
ボクかて隊長やし、別に態度なんてどうでも良えやないの」
『ダ・メ・で・す』


押し黙るボクを余所に、名前ちゃんはそっと朽木隊長に頭を下げた。


『うちの隊長が、失礼致しました』


朽木隊長は、少しきょとん、とした後。


「いや…こちらこそ、朝早くにすまなかった」


と、逆に詫びられ、名前ちゃんは苦笑しながら六番隊長さんを見上げた。


「……邪魔をした」


何か言いたげな表情を浮かべたものの、踵を返して隊首室から出ていく六番隊長さん。
出て行った六番隊長さんと入れ違いで入ってきた、金色の髪と、弱々しく垂れ下がった瞳。


「お早うございます。
今、朽木隊長が出て来ましたが―…」
「ああ、書類届けてくれただけだよって。
気にせんといて」
「はぁ…僕としては、市丸隊長が朝から居る方が気になって仕方ないんですけどね」


ため息混じりに言う、今にも倒れそうなイヅルに、名前ちゃんはまた笑って見せる。


『ふふっ…そりゃあ、あたしが毎朝叩き起してますからね』


得意気に言う名前ちゃんに、イヅルも弱々しく笑った。


「本当に助かるよ。
名前三席には居て貰わないと、市丸隊長は仕事しないからね」
『お褒め頂き、光栄ですー』


ふざけて笑う君の、その無邪気な表情。
名前ちゃんが居てるだけで、空気はこないにも変わる。


「名前ちゃん、ほんまに叩くんやもん」
『それは隊長が起きないからです』
「せやけど!今日のは流石にあかんやろ!」


ボクの言葉に、てへ、とわざとらしく小首傾げて笑う。


「そないな顔してもあかん。
ボク、まだ肩痛いねんもん」







、時々暴力。



(…一体何をしたんだい?)(布団叩きで叩いてみました)



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