(御堂筋長編番外編/3月)

「御堂筋くん、今週の日曜午後て部活無いやんな」

部活終了後、日誌を書いていたマネージャーが不意に声をかけてきた。
このマネージャーは、一年の最初こそボクを怖がってびくびくしていたみたいだったが、今では物怖じせずに話しかけてくるようになっていた。仕事もしっかりとこなすし、成績もそこそこ良い方であるから要領も良い。その他諸々の理由もあり、態度には出さないもののボクはこのマネージャーに一目置いていた。

「無いで」

片付けをしながら、必要最低限の言葉を返す。返事が淡々とし過ぎているためかマネージャーは少しむっとした顔をしたけれど、そんなものは気にしない。マネージャーもマネージャーでボクが淡々とした返事しかしないのは日常茶飯だと分かっているので、それについて不満を言うことはない。
日誌を書いているペンをくるりと手のひらで回し、マネージャーは言う。

「じゃあさ、北野天満宮行かん?」
「ハァ?」
「梅めっちゃ綺麗に咲いとるって友達が言っとったんよ」

マネージャーは比較的成績が良い。けれど、成績が良いのと頭が良いというのは必ずイコールではない。だからマネージャーは時々、こんな風に突拍子もない事を言う。
ボクが目を細めてマネージャーを見ると流石に怖かったようで少し仰け反っていたが、意見を変える気はないようだった。

「自転車競技部の皆で行こ。部活無いし、卒業した石垣先輩とかの進路知らんけど少なくともまだ京都におるやろ」
「じゃー他の皆で行きや。ボクはええわ」
「エースが行かんでどうするん」
「梅見るよりペダル回す方がましや」
「北野天満宮までペダル回して来たらええやん」
「キミ強情やな」

ハァ、とわざとらしくため息をついてみたけれど、マネージャーは折れそうにない。恐らくボクが行くと言うまで粘るつもりだろう。厄介なんをマネージャーにしてしもうたな、とボクは心の中で自嘲するしかなかった。

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