俺はいつでも言葉足らずだ。
というか、言葉をあまり発しない。
その理由はたぶん、言葉を発さなくても感じ取ってくれる人が周りにたくさんいるからだと思う。手嶋とか、手嶋とか、手嶋とか。手嶋以外にも、彼女とか。手嶋は本当に俺が「手嶋」と呼ぶだけで用件を察してくれる凄い奴だ。だけど、今俺の隣にいる彼女は、だいたいは俺の言いたいことを察してくれるものの、時々俺の信号みたいなものを見逃す。

「青八木、部活お疲れー。あ、帰りにコンビニ寄っていい?」

俺の部活が終わるのを遅くまで待ってくれていた彼女は、コンビニで何か買いたい物があるのか、ふふんと鼻歌を歌いながら俺の一歩先を歩く。彼女の問いに俺はこくこくと頷く。言葉はない。

「今日ね、新作スイーツの発売日なの!朝から楽しみだったんだあ」

俺の顔を見ながら、幸せそうに話す。彼女はスイーツに目が無い。それは別に良い。けれど、俺の顔を見ながら話しているのにも関わらず、俺の今の心境は汲み取れていないらしい。俺も俺で、声に出して言う事も出来ない。
それならもう、態度で示すしか無いのだろうか。俺はもう、腹を括るしかないようだ。

彼女の手のひらを掴むまで、あと三センチ。

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