女の子祭り | ナノ



※織田時代




貴女は今頃、何をしている?










「っ―…!」




…最悪だ、


確かに過ぎ去った影がそう愚痴をこぼした

少しするとさっきより速い影が横切っていく。追いかけっこ?すぐ追いつかれちゃうね



『…あらあら』



私は食べ終えた団子の串の横に代金を置いて、その影を追ってみることにした








『あ!やっぱり風魔さんじゃない』

「…………」

「な、なんだお前はっ!!お前も風魔忍かっ!?」

『貴女ははじめまして?私は兎っていうの、よろしくね破廉恥な方』

「っ!!!?」

「…………」

『走りながらじゃなく…ちょっと立ち話にしない?』

「………」

「なっ―…!?」



未だに女の子を追いかける彼に隠し持ったクナイを投げる

驚いた彼女、対する風魔さんは冷静にそれを弾き返し…私の足元を払って体勢を崩した



『きゃあっ!!?』

「お、お前!出しゃばるくせに弱いじゃないかっ!!」

「………」

『あ……』

「っ!!!!」




木から落ちそうになった私の腕を掴んだのは、落とそうとした本人である風魔さん

何も語ることはないけれど、何故邪魔をする…そう言いたげな顔だった




『あ、そっか。お仕事中の風魔さんに会うのは初めてだった』

「………」

『もしかして残念だった?私、そんなに腕のたつ忍じゃないの。貴方なら煙を払うくらい簡単に消せるね』

「…………」

『…だから私、逃げるのだけは得意なんだよ』

「っ………」

『これにてさらば、どろんっ』



ごめんなさい、そう呟く前に私の体は煙に包まれた

破廉恥な女の子もとうの昔に逃げていて…林に残されたのは風魔さんだけだった







『お姉さん、どこも怪我はない?』

「うわぁっ!?な、…!お前は、さっきのっ…風魔はどうしたっ!!」

『風魔さんならまいたよ。でももう少し逃げながら話しましょう』



駆けるお姉さんを必死に追いながら、未だに訝しげにこちらを見る彼女に話しかける

心配は無用、敵じゃないの



『今は休暇中なの』

「忍に休みなんかあるものかっ!!」

『いいのいいの、私が居ても役立つわけじゃないし』



仕事よりもお団子が好き

そう言ったらお姉さんは呆れたような顔をして…止まった。私も側の枝に乗る




『もう逃げないの?』

「ここまで来れば平気だ…とにかく、お前のお陰で逃げることができたな。礼を言う」

『いえいえ、私も風魔さんにご挨拶しただけだもの。破廉恥な方はお仕事?』

「その呼び方は止めろ!……かすがだ、密書を運んでいる」

『密書…』

「どうした?」

『いえ、戦が近いなら逃げなくちゃいけないから』

「お前…兎、だったか。戦が近いと知ったなら、主に知らせるべきじゃないのか?」

『休暇中だもの。賃金以上の働きをするほど忠誠心もないし』

「…私の知り合いに似たことを言うな。だが…お前はどこの忍だ?」

『んー…さすがにそれは言えないわ、かすがさん。私も貴女の素性は聞かないでおくから』

「…それもそうか」



ふっと笑った彼女は密書を大切に仕舞い空を見上げる

お仕事の途中なんだ、これ以上引き止めるのも悪いかな




『じゃあ、気をつけてねかすがさん。なんなら囮になりましょうか?』

「いや、かまわない。お前に借りをつくると後々面倒そうだ」

『失礼な、ただの善意だよ。忍が心を持っちゃ迷惑かしら』

「…いや、ありがたい。次もお前の休暇中に会いたいな」

『ふふっ、戦場では会いたくないわ。じゃあ、いずれどこかで…』




綺麗な金糸の髪が揺れて再び影となり、私の前から消えていった

その逆方向…まだ風魔さんが私たちを探しているだろうか?



『さて…ちょっと顔を見せてみようかな』



捕まったら今度は許してくれないかな?風魔さん、怒ったら怖そうだもの

けど、お姉さんが無事に仕事を終えられますように…




『…あまり動くとお腹が空いちゃうなぁ』




また、お団子食べに行こう





20130303.






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