サンタと空を駆ける



「雪子」

『え…』



突然背後から回された腕に抱えられ、私の体はふわりと宙に浮く

…ああ、そうだ。彼も忘れてはいけない




『大谷さん、メリークリスマスです!』

「ヒヒッ…嗚呼、めりぃくりすますよ」

「おい、大谷。割り込みは無しだぜ」



私は大谷さんと一緒に御輿に乗っちゃってるわけで。私を抱えた彼を政宗さんが睨んでいる

けど大谷さんは小さく笑っただけで、返事は返さなかった



「雪子、残念だがわれは料理はできぬ」

『あ、はい』

「飾り付けにも参加しておらぬ」

『え、と…』

「われでは…何を贈ればよいか、解らなんだ」

『そんな、気持ちだけで十分すぎますよ』



いつもは聞かない大谷さんの困ったような声

彼も悩んでくれたんだ。その悩んだ時間だけで、私は十分なのに



「なに、三成らが準備をしている間にわれも考えた…故に、少々付き合ってもらうぞ」

『へ?……て、きゃあぁぁっ!!!?』

「雪子様っ!!?」



言うが早いか大谷さんは、私を抱えたまま空に浮かんでいった!

御輿が浮かぶこと自体不思議だけど、どこまで行く気だこの人っ



『ちょ、待っ…高すぎます大谷さんっ!!!』

「ヒヒッ、見よ。奴等がごみ粒のようだ」

『バルスっ!!?どんだけ浮かぶんで……あ…』

「………」

『…すごい、』



私たちの足元に広がっているのは、町中を彩る光だった

赤、白、緑や青…家の光だけじゃない、クリスマスのイルミネーションが綺麗な夜景をつくり出していた



『一望、ですね…』

「これ、身を乗り出して落ちるでないぞ」

『はいっ…』



二人で乗るには小さな御輿。落ちないように大谷さんに掴まって、私はこの景色を目に焼き付ける

これが彼のクリスマスプレゼントなんだ



『…ふふ、ちゃんと準備してくれてるじゃないですか』

「われも奴等に負けるわけにはいかぬでなぁ…気に入ったか?」

『はい、とても!』

「…ならばよい…ん?」

『あ…雪ですよ大谷さん!』



ふわりと落ちてきた白は雪だった。ふわりふわり…ゆっくりと降るそれは、夜景をより神秘的なものにしてしまう

…ホワイトクリスマスだ



「…寒くはないか?」

『寒いですよ、けどもう少し見たいです…この景色』

「…今日はぬしのワガママが最優先よ。ゆるりとすごせ」

『はい。あ…でもお腹はすきました』

「…………ヒヒッ」



可笑しそうに笑う大谷さん。その肩にかかった雪を払えば、私の頭のそれを払ってくれる

顔を見合わせてまた笑った




『大谷さんこそサンタクロースでしたね。赤と白…御輿はソリみたいだし』

「ヒヒッ…では、われと共に不幸でも届けに行くか?」

『魅力的なお誘いありがとうございます。でも今年は、みんなでクリスマスパーティーにしましょう』

「そうか…致し方ない」

『はい。あ、大谷さんっ』

「……………」

『素敵な贈り物、ありがとうございます』

「…ああ、それは降りてから皆に言うてやれ」

『はい!』





皆さん、よいクリスマスを



1224.


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