「なんだか今日はびっくりすることばかりだった…」
「ははは、そうだな!」
「笑い事じゃないよ蛮骨!」
ご近所さんの挨拶を無事に終え、私達は家に帰ってきた。蛮骨は明日の仕事の資料をリビングのテーブルで整頓し始め、私は近くのソファに座る。
…どうやら犬夜叉さん、かごめさん、蛇骨さんの他にも、煉骨さんや霧骨さんという人達とも知り合いみたい。
煉骨さんは、蛮骨を見た瞬間になぜか「うぎゃぁあ!」って悲鳴をあげて一目散に逃げていった男の人。蛮骨が笑顔で追いかけ回して捕まえたけど…。
すみません、あの時ちょっと笑いました。
「このマンションって蛮骨の知り合いがたくさんいるね。しかもおもしろそうな人達ばかり」
「そうだなー、あいつらは個性が強いから毎日退屈しねぇぞ」
「仲良くなれるといいなぁ」
「結菜なら大丈夫だろ、俺も協力するし」
資料をテーブルへ適当に置いて、蛮骨は私の隣に座った。ぼすん、という音がして少しソファが沈む。そして彼は私の髪を何回か撫でてから軽く口づけた。
唇が離れた時に絶対目が合うんだけど、こういう時につい笑ってしまう。今回も頬を思いっきり緩ませてしまった。…とにかく幸せ。
「なんだよまたそんな顔して」
「…ね、もう一回」
「ん、…あ、やっぱやだ」
「えー!」
「たまには結菜からしろよ」
「そんな急に…!」
実は私からキスをした事は今までで二回くらいしかない。すごく恥ずかしくて自分からはできない。
蛮骨の注文にもじもじしていると、腰を彼に引き寄せられて無理矢理対面した状態になった。あああ、こいつ、マジだ。頑固だから、私がするまで絶対に離してくれない…!
「じゃあ、目を閉じてよ」
「…俺達は付き合い始めた恋人同士じゃねぇんだぞ」
「そうだけど恥ずかしいの!」
「ったく、仕方ねぇなー」
渋々目を瞑った蛮骨の右肩に手を置いて、小さく深呼吸した。そしてゆっくりと顔を近づけて唇を当ててみると、その直後突然手首を掴まれてソファーに押し倒された。
…は、はい?
不敵な笑みで蛮骨は私の手首を押さえ、もう片方の手で顎を掴んできた。ちょ、これは、もしかしてもしかしなくても…。
「ど、ど、どうしたの?」
「こんなことで照れるお前がかわいいから我慢できなくなった」
「ままま待って、心の準備が!」
「そんなもんいらねぇよ」
「えー!」
制止させようとしたものの、蛮骨の力に勝てるわけがない。…まあ、いいか。抵抗するのがなんとなく変に思えて、私は彼に身を委ねた。
To be continued.