私にしては珍しく、雀の鳴き声で目が覚めた。いつもならゆっくり起き上がって伸びを…、しているんだけど、うーん、まだ眠たい。
重い瞼を擦りつつ寝返りを打てば、気持ち良さそうに眠っている旦那様と向かい合うことに。…相変わらずかわいい寝顔を見せる人。ちょっと幸せな気持ちになる。

にやけ顔を抑えつつもじっと彼を見つめてみたら、勢いよく蛮骨の腕が布団から飛び出した。うわ、とびっくりする間もなくその腕は私を捕らえ、自分の方へ抱き寄せた。


「ちょ…蛮骨、苦しい」
「ん…暖かい…結菜…」
「寝ぼけてる?」
「…悪い、起きてる」
「窮屈だから離してー」
「抱き心地いいから無理」


蛮骨の腕の力が一層強まったせいでさらに苦しくなった私は、うえ、とかわいくない声を出してしまった。さ…最悪…!恥ずかしくて彼から顔をそらせば「照れてんのか?」なんて言われて、余計に私の顔は熱くなる。
誰のせいよ、誰の!
未だにこんなにどきどきしてしまうのは新婚だからなのかな。そんなことを思いながら枕元の時計を見た。…あ、もう起きなきゃ。


「そろそろ起きるよー」
「んん…、休みなんだしもうちょっと良いだろ…?」
「うん、蛮骨は寝ていていいよ。私は朝ごはんを作ってくるからちょっと待ってて。ね。」


蛮骨の背中を撫でながらそう言えば、ん、と彼は短く呻いてからゆっくり手を離した。そして私の頬にくちを寄せ、小さなリップ音を立てた。ちょっとくすぐったい。私が笑うと、彼もふんわり笑って「おはよ」と言った。







「あ、結菜。」
「何ー?」


朝食を済ませ、食器を流しへ持ってきた蛮骨が私に声をかけてきた。それに対して、洗剤のついたスポンジを揉み込みつつも私は返事をした。そしてそのままじゃぶじゃぶと水で泡を流しながら彼の言葉に耳を傾けた。


「急で悪いんだけど、弟分達を明晩に招いてもいいか?」
「弟分?」
「蛇骨や煉骨達だよ。明日偶然会えることになってさ」
「ちょちょちょっと待って、何人なの?家に入れる!?」


びっくりして思わず手が止まった。…あ、お水も止めなきゃ。勿体ない。
この部屋は夫婦での暮らしには十分広さがあるものの、大人数が入れるようなスペースは無い。慌てつつも私が問うと、晴れやかな笑顔で蛮骨は親指を上方に立てて「グー」のポーズを見せた。


「大丈夫!俺を含めて4人!」
「あれ?蛮骨の弟分って6人いるんじゃなかったっけ?」
「…おー、あとの奴らは仕事だ」


先程とは対照的に、彼は肩を落として低い声でそう言った。す、すごく残念そうね。…ということは、お客さんは3人か。それなら何とかおもてなしできそうだし、蛮骨が喜んでくれるなら私も頑張っちゃおう!
私は再び皿洗いを始めた。


「いいよ。久々の再会でしょ?お料理作って歓迎する」
「本当か!ありがとな!変人しかいねぇけど、いい奴らだから!」
「変人!?どんな!?」
「簡単に言えば、賢いハゲと変態なオカマと変態なストーカー?」
「…!」


簡単に言いすぎて、不安と不信感しか抱けない…!
快諾してしまったことへの後悔で倒れそうな私に、面白くて本当にいい奴らだから安心しろ!と蛮骨は楽しそうに彼らの話をしてくれた。

ど…、どうなるんだろう。
お皿を手から滑らせてしまいそうになりながらも、私の頭の中は明日の献立でいっぱいだった。



To be continued.


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