うーん、今日もいい天気…洗濯日和だなぁ。ゴミ出しのためにマンションの玄関口まで降りてきた私は、いつもと同じように軽く伸びをした。すごく気持ちいいから、晴れた日には必ずこうしている。すっきりした気分でエレベーターへ踵を返せば、白銀の綺麗な髪をなびかせた男性が管理人室から出てくるのが見えた。


「結菜。お早う」
「おはようございます、殺生丸様」
「…その呼び方はやめろと言ったはずだが」
「あ!ごめんなさい、つい…」


慌てて謝ったものの、不機嫌そうな殺生丸様は腕を組んで私を見た。

彼は私の幼なじみ。昔から美しくて気高くて賢くて、…冷たいけれどそんなところも人気。小学生の頃からファンクラブがあって、彼を慕う人は山ほどいる。今現在は、研究者兼このマンションの管理人として働いている。私達夫婦に割安でここを紹介してくれたのは、彼。

私が恐る恐る様子を伺うと、殺生丸様は機嫌を損ねた様子のまま私の頭を掴み、ぶっきらぼうにぐりぐりと押さえつけてきた。う!これは…撫でられている?


「どうだ、新生活は」
「おかげさまですごく幸せです!部屋を紹介してくださってありがとうございます!」
「…結菜は特別だからな」
「え!なんですって?」
「私の幼馴染みであり、小中高の後輩、そしてファンだという者はお前だけだ…」
「あ…ああ、そういう…」


殺生丸様の言う通り、私は彼に憧れ、アイドル的な存在として崇めていた。とにかく私は健気に彼を追い続け、けっこうイタい子だった…だから「殺生丸様」っていう呼び方は癖になっちゃって、なかなかやめられない。

殺生丸様の言葉に対し、私は笑ってごまかすしか出来なかった。肩を竦める私を見て、殺生丸様は口元に指をあてて何やら考え始めた。…昔からの付き合いだからわかるんだけど、彼は気高くも意外とぼんやりしていることが多い。今まさにそうだわ。少しの間を置いてから、おーい、と殺生丸様の目の前で上下に手を振ってみると、ぱちんと視線が絡んだ。あ。今の表情、珍しくかわいかったです。


「…ふん…とにかく、幸せならばそれでいい」


そう言うと、彼は私の髪を一束すくってほのかに笑った。…おお…、…い、いけない!見とれていた!それにしても、蛮骨とはまた違って、殺生丸様は妙に艶っぽい…、…駄目駄目!邪念でいっぱいの自分の頬を殴り、私は深呼吸した。イタい自分から卒業するのよ!かわいい奥さんに…


「結菜」
「は!はい!」
「…また私の背を追いたいならば、構わないぞ」
「そ…それはどういう…」
「では」


意味深に殺生丸様は微笑み、私の髪に口づけを落としてから部屋へ戻って行った。…今のって、ファンでいてもオッケー!っていうこと?わ、わからない。でもそうなると、本人公認のファンって私だけなんじゃ…え?え?光栄ですが私には旦那さんがいてそれで

………。

彼の台詞を自分の中で整理することに時間がかかり、その日の家事があまりはかどらなかった。



To be continued.


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