「舞…起きろよ、おい」


私の耳元で犬夜叉が喋っている。…うるせー。うっとうしさを感じて拳を振り上げたけれど、いつもどおりヤツはそれをかわした。くそ…また避けやがったな、そう思いながらうっすら目を開けてみる。…あれ、何よ、真っ暗なんですけど。


「ちょ…太陽出てないじゃん…まだ夜じゃん…あんた最悪…」
「さっさと起きろ」
「う、る、さ、い、…寝る…」


布団をかぶりなおそうとすると、犬夜叉が腕を無理矢理引いてきた。眠たくて力が出ない私の身体は上半身だけ起き上がり、そのままヤツの胸に顔を押し付けられた。


「あんまり無理すんじゃねぇよ」


…………は?


「イヤーーー!!」
「うるせえ!」
「ぎゃひーー!!」


頭に痛みが走る。上を見ると、いらついた表情で立つ変態犬夜叉の姿があった。先程の出来事を思い出した私の顔は一気に熱くなり、視線が泳いでしまう。あぁあ、何だったのさっきのは!確認したほうがいいのかな、うん、注意はしておくべきだよ!


「ちょ…あんた、私のことどう思ってるのか知らないけど、そういう大胆な行動は、その…慎むべきかと…!」
「あ?うるせえと思ったから殴った、それのどこがいけねーんだ」
「…なんか色々言いたいけどつっこむのめんどくさい…」
「めんどくさいって言うな」


ごつ、とまた頭を殴られて、私は言葉にならない叫び声をあげた。あたたたた!脳細胞が死ぬ!なんだあいつ、あんな事をしたくせに私を殴るなんて…しかもグーで!

痛むところを優しく優しく撫でていると「舞ちゃん、朝ごはんできたよ」と、かごめちゃんの声が聞こえてきた。

…その時私は、気づいてしまった。
さっき犬夜叉にハグという名のセクハラを受けたとき、周りは真っ暗だった。だけど、今はお日さまがさんさんと照り、鳥さんたちも楽しそうにチュンチュンと鳴いて、犬のお馬鹿さんはこっちを睨みつけている。


「あれは…夢!?」


脳内ではぐるぐると色んな感情が駆け巡る。堪えられず、私は固く目を閉じて頭を抱え込んだ。
あぁぁあぁ、男の人に思いっきり抱きしめられる夢なんて…!しかも相手が犬夜叉って。無理無理無理!願望なの?なんなの?!


「おい犬夜叉、お前が殴ったせいで舞が頭を抱えておるぞ!」
「気にすんな七宝、あれくらいでくたばるような奴じゃねぇだろ」
「左右に首を振り始めた!」
「ほっとけ、飯食いに行くぞ」
「今度は地面に頭を打ち付けておるが大丈夫なのか犬夜叉!?」
「…だ…大丈夫だろ…、多分」


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