「舞ちゃん!」
「ぐっ…かごめちゃん、苦しい!息、できな…う、ぐぁぁ」


皆の元へと無事戻ることが出来た私は、瞳に涙をいっぱい溜めたかごめちゃんに抱き締められた。思いっ切り!


「かごめ、そろそろ離さねぇと舞が死んじまうぞ」
「!ご、ごめんね…大丈夫?」
「大丈夫だよっ…ゲホ、私こそ心配かけてごめん」


犬夜叉に指摘されたことで私の命の危機にやっと気付いてくれたかごめちゃんは、慌てて私から離れた。
珊瑚ちゃんの怪我が気になり目を移すと、木にもたれかかり拳を固く握り締めている姿が見えた。なんだかすごく苦しそうで、思い詰めた表情をしている。私はお礼を言いたかったし心配だったから彼女のところへ駆け寄った。


「珊瑚ちゃん、あの時はありがとう。怪我大丈夫…?」
「礼なんて言わないで。助けられなくてごめん、舞ちゃん」
「え…なんで謝るの?」
「退治屋のくせに無防備すぎた。もっと注意するべきだった」
「そんな…気にしないでよ、連れ去られた私が悪いんだからー」
「助けられなかった私が悪い!」


私を助けられなかったことを珊瑚ちゃんは悔いていたみたいで。眉間にしわを寄せて下唇を噛むという、普段とは違う表情を見せる彼女に胸が苦しくなった。


「そんなに自分を非難しないで。責任感に押しつぶされちゃうよ」
「……。」


下を向いたままの珊瑚ちゃんに向かって、パン!と手を叩いた。その音に驚いた彼女は伏せていた顔をあげる。


「今回のことは、式神を使えなかった私が悪いの。はい、この話題は終わり!」
「でも」
「おわり!…怪我お大事にね」


傷をそっと撫でながら珊瑚ちゃんの顔を見ると、先程とは違って明るい表情に変わっていた。そして彼女は、ありがとう、と呟いた。それに対して私は笑顔で返した。


「むふ、珊瑚ちゃん可愛い…」
「舞、お前なんだか怪しい目で珊瑚を見てるぞ」
「気のせいじゃないかな犬夜叉くん?」

「さて、舞様も無事に戻られた…旅を再開しましょう」
「ええ、そうね」


弥勒様の一言から皆歩み始めた。…犬夜叉一人を除いて。





―…そいつは妖怪達の間じゃ有名なんだよ!…―

舞を連れ去った妖怪の言葉がずっと引っ掛かっていた。四魂の玉を利用してまであいつを狙っている奴がいる…そんなことをする存在なんか一人しか思い浮かばねぇ。あの野郎…


「舞!」
「何よ犬夜叉ー!」


立ち止まっていた犬夜叉に背後から呼び掛けられ、私は振り返った。早く歩いてこいよ、なんて思いながら。


「…てめぇは俺が守ってやる」
「え?」
「あんなやつに渡さねぇ!」
「はい?」


犬夜叉はそう宣言してから珊瑚ちゃんをおぶり、私達の先頭を歩き出した。


「な、何なのあいつ?」


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