「ねねね願いを叶えるって…意味わからない、何それ!?」
「今からお前を殺すつもりで攻撃する。式を使わねば、お前は死ぬぞ」


怯えながらも大きな声で菫さんに訴えたけれど、彼女は無表情で淡々と話を進める。


「私の質問は完ぺき無視かよ!」
「うるさい。お前の問いに答える義務はないだろう」
「そりゃそうだけど…」
「では行くぞ」
「は!?」


な、なんなの、怖い!多分先祖である菫さんのあまりにも冷たい態度に、私はうろたえてしまう。そんな私に構わず彼女は変な紙を取り出し、それを人差し指と中指の間に挟んだ。


「渦判裂狂…剛焔!!」


彼女がその指を私に向けて何やら唱えると、目の前には巨大な狼が現れた。そいつは銀の毛並みをなびかせ高貴な雰囲気をしている。まままさか私、これに攻撃されちゃうのかな?ん?
座ったままその狼を見上げ、じりじりと後ろに避難する。額からは冷や汗が沢山こぼれた。とにかく怖い。


「剛焔…行け。」


菫さんがゆっくり私を指すと、狼は床を強く踏んでこっちに飛び掛かってきた。
い、いやだ…!


――舞…お前はまた、他人の助けを求めるだけか?――


!!
頭の中で響くあの声。私は…自分でなんとかするって決めた。だからこんな奴に負けるもんか、ばかやろう!


「…裂唏!」


そう叫ぶと私のポケットが眩く光った。この時代に来て初めて妖怪に襲われた時も、こんな風になって妖怪を退治したことを思い出す。
ポケットの中を見ると、そこには一つのお守りが入っていた。幼い頃に祖母からもらった大切なもの。


「…婆ちゃん…」


それを取り出して中を覗くと、菫さんがさっき使った紙によく似たものが入っていた。もしかしてこれが、式紙を操るための…?


「第一段階は会得したようだな」
「え」


菫さんにそう言われて私は彼女の視線の先を見た。その先、自分の後ろには…狐?大型犬ほどの大きさの狐がちょこんと座っていた。


「何これ!ものすごく可愛いんですけど」
「裂唏…我が一族の人間が初めて使う式は、必ずこいつと決まっている」


懐かしそうに菫さんは裂唏を見つめる。その表情からは今までと違って優しさを感じた。


「菫さんも使ったことあるの?」
「こいつは主人を空間移動させることができる。…だから奈落が閉じ込めた場所から逃げられたのだな」
「また無視ですか。」
「…奈落、この女の仲間が来る前にここを立ち去るぞ」
「用は済んだのか」
「ああ、これを確かめたかっただけだからな」


菫さんはそう言いながら裂唏を指す。そして何か企んでいるような顔をし、妖しげに笑った。


「この女はどうする」
「連れて行かず、放っておいた方がいい。第一段階を超えた後は時が満ちねば力を得られぬ」


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