「あー…眠い」


大きなあくびをしながら、顔を洗うために井戸へ向かう。
全然眠れなかったな…戦国時代やら妖怪やら式神やら、意味のわからないものばかりだし。安心だ、って言われても怖くて眠れない。これからどうしようかな。

考え事をしながら顔を洗い、水面に映る自分を見た。…うわー、クマがひどい。最強に不細工。


「おい」
「ぎゃー!」


急に声を掛けられたから、水の入った桶をひっくり返してしまった。背後を見ると、腕を組んでそっぽを向いている犬夜叉がいた。…あ、そういえばあの後結局無事に帰ってきたんだっけ。


「どんくせぇな」
「あ、あのね、急に話しかけてくるのも悪いでしょ?」
「俺は普通に話しかけたぞ」
「……。」


初めて会った時にも思ったけど…こいつ口が悪いな。苛々しながらも私は犬夜叉との会話を続けることにした。


「で、何の用?」
「別に。お前が見えたから話しかけただけだ」
「…あら、そうですか」


何をしたいのかわからない。というより、何も考えていない可能性が高い。これ以上話しても無駄だと思いながら、私はもう一度水を汲んで手を洗った。


「…おい」
「もう、何よ!」
「お前弱いみてぇだからな、しばらくは俺達がそばにいてやる」
「……。」
「夜に妖怪に襲われるようなことは起きねぇ」


な…何、急に優しくしちゃって。さっきまでは無愛想な態度だったくせに、……。泣き顔なんて見せたくない私は、顔についた水滴と零れそうな涙を共に拭い、桶を井戸の中に放った。そして楓さんの家へ戻ろうと歩き始める。
……。けれどその足を止め、私は犬夜叉の方へ振り向いた。


「い、犬夜叉」
「なんだ」
「ありがとう…すごく嬉しい!」
「…おう」


犬夜叉は無愛想だけど、さり気なく優しい人なんだな。…ありがとう。心の中で再びお礼を言って歩き出した。




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