あれから毎日、再び時祢に岩を持たせる修行をしたり、時々キリも呼び寄せて二体同時召喚したりと色々な事に取り組んでみた。
失敗することもあったけれど、けっこう順調に修行を進めている。…だけど、強くなったという確信は相変わらずない。
「うーん、どうしよう…」
「舞」
「お、犬夜叉」
座禅を組み一人であれこれ考えていると、犬夜叉がこっちにやって来て隣りに座った。そして私に、ほら、と言って缶ジュースを手渡す。かごめちゃんからの差し入れらしい。ありがとう、と言って私はごくごくとそれを飲み干した。
「あれから調子はどうだ?」
「強くなっているようないないような…曖昧なんだよねー」
「痩せ狼と戦う前にもそんな事言ってたじゃねぇか」
「あー、うん、自分の力量がわからないんだわ、結局」
「じゃあ俺が相手をしてやるよ」
「え?」
ぐい、と犬夜叉は私の腕をひっぱり立ち上がらせると、突然鉄砕牙を抜いて斬りかかってきた。何が何だか状況を理解できない私は、反射的にキリを呼び寄せて太刀を上手く受け止めさせる。あああ、びっくりした、びっくりした!
「お前、最初に比べたら様になっているじゃねーか!」
「な…何言ってんのよ、危ないな!死ぬかと思ったわ!」
焦る私に構わず、犬夜叉はぎりぎりと鉄砕牙でキリの刀を押してくる。歯を食いしばって耐えるキリに代わり、私は右側から思いっきり犬夜叉に殴りかかった。
けれどそれを感じ取った彼は素早く後方に避けた。かわされた、と思った瞬間、凄まじい音と共に私の右頬に激痛が走る。
「な…な…殴ったな、しかも相変わらずグーだし!」
「油断すんじゃねぇよ」
「ば、ばか!いきなり戦闘開始するか?いきなり殴るか!?」
「馬鹿はてめぇだ、戦いなんざいつ起きるかわからねぇぞ!」
「!」
犬夜叉は普段よりもきつめの語調でそう言った。…確かに、敵が攻撃を待ってくれるわけないし、いつ襲い掛かってくるかもわからない。
だけど、だけど…。
犬夜叉に殴られた頬を触ると、やっぱり腫れてしまっていた。とにかく痛い。口元を袖で拭うと真っ赤に染まり、それを見た途端わなわなと身体が震え出した。
「舞は考え方が温い、俺が鍛えてやるぜ!」
犬夜叉はそう言って、ちょいちょいと人差し指を動かして私を挑発してきた。…あんたが言っていることは正しいと思うよ。
「…だけど、いきなりグーで殴ることないでしょ!?寸止めするとかさ、鋼牙みたいな優しさを少しは持ち合わせろ!」
普段ふざけている時よりも数倍力を込めて殴られたらしい、大量に血が出ているから口の中は深く切れている。痛い、痛すぎる。
「キリー!あいつをめっためたにしてぎゃふんと言わせろー!」
こんな怪我を負わせた犬夜叉に対する怒りが爆発し、私は腹の底から叫んだ。
「…主、ぎゃふん、とは何ですか」
「後で説明するから頑張れ!」
キリはなんだかすっきりしないような表情で犬夜叉に向かって走り出した。
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