「弥勒師匠!弥勒師匠!」
「なんですか?…あと、呼び方がまた変わりましたね」
うん、ある時は変態様と呼んだりしたけどそれは置いといて!
草原で一人瞑想していた弥勒様の側に駆け寄り、私は彼の手をぎゅっと握って目を見つめた。そして呼吸の乱れを整えるために数回深呼吸。
「…舞様、私を誘っていますか?そうなんですね、そうなんでしょう」
「それだけはありえない!」
「えー…」
「私、疑問があるの」
肩を落とす弥勒様はスルーしておいて無理矢理話を進めよう。
…昨日戦った時、偶然式神を二体同時に召喚することが出来た。だけど私は気絶して倒れ込んでしまった。
「私には霊力が膨大にあるって言っていたよね、なのにどうして昨日は力尽きたんだろう?」
「無理をしたからですよ」
「…へ?」
なんとなく弥勒様の手を離すと、彼は立ち上がって木の棒を拾い、地面にがりがりと書いて説明を始めた。
「舞様は元々霊力のある方なので、修行をすれば式神を扱えます。そして最近やっとまともに召喚出来るようになりましたよね?」
「うん!」
「霊力を扱うことにまだ身体が慣れていないのです。だから昨日は霊力の放出量に耐えられなかった」
「なるほど…」
弥勒様の解釈に私自身納得だった。簡単に言えば、霊力がぼかーんと爆発して身体がぎゃひーってなったということだね。
…後にこのような説明を犬夜叉にしたら「意味わかんねーし相変わらず馬鹿っぽいな」と鼻で笑われた。
「じゃあ、それに耐えられる身体作りをするのが課題かー」
「そうです」
「ちなみに今の説明って木で地面に書く必要なかったよね?」
「舞様!」
私のささやかな疑問をスルーで返された。そして弥勒様は木の棒を後ろに放り投げ、私の手をがっちりと握る。うわ、さっきと立場が逆になっている!
しかも、その木の棒はしゅるしゅると綺麗に回転をし、少し離れた場所でかごめちゃんと談笑していた珊瑚ちゃんの頭にこつりと当たった。あー!可哀相!
大丈夫かどうか心配で立ち上がろうとすると、弥勒様に邪魔されてしまった。手を握る力が強くなった事にびっくりして、私の意識が弥勒様に向く。
「そろそろ良いのではないかと思いますが…」
「何が?」
「子作りです」
「まだそんなことを言うの!?」
「まだ、とはなんですか!」
「しつこいなぁと思っ…、あ」
ふと弥勒様の頭上を見ると、拳を握りわなわなとした珊瑚ちゃんがいた。
「弥勒様、後ろ、後ろ」
「はぐらかそうとしても駄目です」
「私は命の危険を教えてあげているだけで」
「そんな大袈裟な…、…。」
振り返った弥勒様は、素早くこっちに顔を戻して冷汗をだらだらと流していた。
そして私に、夢ですよね?と確認。
いや、現実です。
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