「お、おい、舞」
「…ななな、なによ?」


焼き魚をかじっていると、犬夜叉が恐る恐る話し掛けてきた。コイツを見るとあの夢を思い出してしまう。…なんだか気まずい私は、視線を空に固定したまま返答をした。


「頭…大丈夫か」
「…はい?私の脳は正常ですけど、喧嘩売っているんですか」
「そうじゃねぇよ!痛くないかって聞いてんだ!」


犬夜叉を見ると、彼は心なしか少し顔を赤らめて気恥ずかしそうだった。そしてすぐに私から視線をずらした。
な、なんなの!?私の身体を心配するなんて…、お前こそ頭大丈夫か。これが噂のツンデレってやつか。


「さっき痛かっただろ。そ、その…悪かった、な」


ずきゅーん!
…ん?ずきゅーん?


「いやいや!何よ今の効果音!?落ち着け私、相手は犬、ドッグ!」
「てめぇこそ喧嘩売ってんだろ」
「うううるさい!ちょっと心配されただけじゃ私の心は盗めないよ!」
「盗む気ねぇし」


心臓が飛び出そうになり、私は一生懸命口を塞いだ。血がどくどくなっている、鼓動が速い、何これ、きもちわる!
もどかしくて割り箸で頭を叩いていると、目の前でつむじ風が起こった。そして、一つに束ねた髪を揺らして鋼牙が目の前に現れた。


「よお!舞、約束通り来たぜ…、って、ん?どうかしたか?」
「え!?ななななんでもないから気にしないで!」
「けどな、そんなもんで殴っていたら怪我するぞ」
「あ…ありがと…」


こんなに自然に男の人に心配されるのって久々だから嬉しいかも…!弥勒様も心配してくれるけど、下心というオプションがもれなく付いてくるし。それに犬夜叉は…、…あぁあぁぁ!!
さっきまでのことを思い出してしまった私は髪を掻き乱して、草原に横たわった。思考回路はショート寸前。今すぐ会いたいよお母さん。


「舞?本当に大丈夫かお前…今日の手合わせはやめとくか?」
「だ、大丈夫!お願いします」


慌てて立ち上がり、手を差し出す私。それに対して鋼牙は力強く握り返し、清々しい笑顔を見せてくれた。


「どう戦う?ひたすら殴り合う?」
「いや、それはあれだな…女を殴りたくねぇからなあ」
「けっ!こいつを女と認識する時点でてめぇは負けているぜ!」
「どういう意味よ犬夜叉」


なぜか勝ち誇ったような表情で話す犬夜叉に、私は蹴りを食らわせた。それがなんとまあ珍しいことに当たった!奴はスネを撫でてこちらを睨みつけてきた。ふっ。ざまあみろ。


「式神に私の身を守らせる練習をしたいから、遠慮しないで」
「舞がその方法でいいなら俺は構わねぇけど…」
「よし、んじゃ早速始めよ!」


鋼牙の手を引いて広原へ向かおうとすると、犬夜叉が私のもう片方の腕を掴んできた。…さっきからなんなんだお前は!つい苛立ってしまう私は、何よ、とだけ問いかけてじっと見つめた。


「…く」
「え?なに?」
「俺も行く!仕方ねぇからお前らの戦いを見てやるよ!」
「誰もてめぇなんかに頼んでねぇからな、ってかなんだよその上から目線は」
「犬夜叉、別に見てくれなくていいからね、ってかなによその上から目線は」


…いいかんじに鋼牙とハモった。お互い見合わせて笑うと、犬夜叉がさも気にくわない顔で私達の間に割り込んだ。おお、これは…兄弟喧嘩に巻き込まれる母親の気分!お母さんは僕のだよ!みたいな!

そんなことを考えていると、どうやら私はにやにやしていたらしい、案の定犬夜叉に殴られた。本日三回目です。覚えていやがれ。


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