「ぜー…はー…う…けっこう、きつい…な…」


日が沈んできて、橙色の世界が広がる。それに反して私と時祢は青ざめていた。
力を維持することは想像以上につらくて、いつ時祢が消えてもおかしくない程に私は霊力を消費していた。呼吸は乱れ、私達の身体はふらふら、時祢の足なんて覚束ない状態になっている。


「…俺、げ…限界…」
「だ、だめ!私も頑張るから!ね!」
「主…。わかりました」


時祢は倒れそうになりつつもなんとか踏ん張った。
そして弥勒様が、あと三十数えたら終わりにしよう、と私たちに声をかけた。
…三十秒…堪えられるかな…
私がそう思った直後、岩を持ち上げている時祢に向かって真横から何かが飛んできた。そしてそいつは何やら叫んだ後に時祢の横腹を思いっきり蹴飛ばした。

あまりの速さに私は何もできなかったし、時祢も反応する体力も気力も残っていなかった。


「ぐは…っ!」
「時祢ー!」
「…む、無念…です」


時祢はキラキラと輝きながらスローモーションで左へ飛んでいった(ように私には見えた)。
岩は地面に落下、凄まじい音を立てて粉々に割れてしまった。もちろん時祢も同時に紙と化した。あぁ…あと少しで目標達成だったのに…!


「大丈夫だったか、舞!」


私たちの目標達成を見事にぶち壊してくれたそいつは、うなだれる私に駆け寄って肩を抱き寄せた。こいつ、…。


「あんたのせいで台無しだわ鋼牙ぁぁあ!」
「な、なんだ、どうした?久々に恋人が会いに来たのに怒るなよ」
「誰が恋人よ誰が!」


…犯人は、妖狼族の鋼牙だった。蹴飛ばした理由を聞くと、彼は奈落を探す途中に偶然私の匂いを感知したらしい。それを辿っていくと、時祢が私を岩で潰し殺そうとしている!のが見えたと。

………。


「私が紛らわしく苦しそうな表情をしていたのが悪いのかな…あれは私の式神で、修業の途中だったんだよ」
「そうなのか!?わ、悪かった!」
「……。」
「本当にすまねぇ!」


両手を顔の前で合わせ、何回も謝ってくる鋼牙。…なんだか、可哀相に思えてきた。


「もういいよ、私を助けようと思ってしてくれた事だし…、ありがとうね」
「舞っ…!愛してるぞ!」


私がそう言うと、鋼牙の申し訳なさそうな表情は笑顔に変わった。そして私を正面から思いっきり抱きしめた。ぐえ。


「ちょ、苦しい、いくらなんでも調子良すぎ…っ離せー!」
「恥ずかしがってんのか?」
「違う!」


どいつもこいつも…



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