「…新たなる式を召喚しなければお前に勝ち目はない。菫様の期待を裏切るな」
「うるさい!」


まともに召喚できるようになったばかりなのに、都合よくほいほい新しい式神を呼び出せるのかな…。そんなこと出来るのは漫画の中だけじゃない?
そう思いつつも私は新しく札を取り出し、それを掲げた。そして、叫ぶ。


「やってみなきゃわからない!さぁ、新・下僕・カモン!」


………。


「か、カモン!」


……………。


「死ね」
「ぎゃーーー!」


苛立った様子の化け物の尻尾が私の真横…地面を貫通した。その空けられた穴は私の手よりも小さい。もしこんなもんで刺されたら…。想像するのも恐ろしいわ!


「動揺してはいけません!落ち着いて、冷静になるんです!」
「舞ちゃんなら大丈夫だよ!出来るはずだからっ」
「弥勒様、珊瑚ちゃん…」


私の頼みをきちんと聞いて、手を貸さず見守ってくれていた二人の言葉。そうだ、式神を使う時は心を落ち着かせなければいけないんだった。

目を瞑って、深呼吸を数回した。そして化け物と向き合い、戦いに集中する。


「ふん、今更やる気を出したのか?早く儂を楽しませろ」


化け物の挑発は無視し、さっきの時祢の言葉を思い出す。えーと、き…き…きり…うーん…それで多分…


「…わかった!」
「まあ唱える時間はやらんがな、くらえ!」
「危ない!舞ちゃん、悪いけどもう手を貸す…」
「待て珊瑚、よく見ろ!」
「法師様?」


楽しませろ、とか言っときながら炎を飛ばしてきた化け物に向かって私は両手を突き出す。さっき取り出した札を人差し指と中指に挟んで。


「はっはっは、思い出したんだから!隱窘鑿匳齔…桐胡!」


眩い光が放たれた直後、私の前には剣を持つ長身の男が出現し、そいつが炎を真っ二つに斬った。
…すげぇぇ!!
私の目ん玉が飛び出てしまったから、慌てて両手で押し込む。


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