「では舞様、これからよろしくお願いします」
「よよよろしくお願いします!」
「頑張ってね二人とも」
珊瑚ちゃんはそう言って、五十メートル程離れた場所へ行き筋トレをし始めた。ここは、木が何本か立っているけれど見晴らしのいい原っぱ。弥勒様は腰の高さくらいの岩に座り、話し始めた。
「舞様のもつ霊力ですが…かごめ様ほど、いや、それ以上かもしれません」
「え、ってことはつまり」
「潜在能力は桁外れ…です。腕を磨けば、妖怪が襲ってきたとしても楽に対処できます」
なるほど、つまりやれば出来る子ってわけね!弥勒様の説明を聞き大きく頷いた。そしてさり気なく手を擦られていたから、彼の手の甲をつねっておいた。
「頑張っていきましょう。おそらくすぐに会得できますよ」
「頑張ります!」
それから、私達の霊力開花大作戦が始まった。
まず、式神を召喚させるための基礎的な技術を教えてもらった。どうやら私は力みすぎていたり集中していなかったりと、足りない部分が多すぎたようだった。
「舞様、ひとまず休憩をしましょうか」
「はーい」
朝から昼まで絶え間無く訓練をしていたためちょっと疲れ始めた。それに弥勒様は気付いてくれたのか、私に休憩を提案した。
「ところで舞様」
「うん?」
水筒からお茶をコップに注ぎ、弥勒様に手渡す。彼はそれを一口飲んでから、こう続けた。
「恋人はいますか?」
「ぶーーーっっっ」
弥勒様の突拍子もない発言に、思わず私はお茶を吹き出してしまった。嗚呼、きれいな虹がかかっている…
笑顔で話す弥勒様、何がしたいのか何が狙いなのか全く読めない。
「なんでそんな話を…」
「まあまあ、息抜きですよ」
「ま…まあ、いませんけど…」
「では良いではありませんか」
「え、何が?」
「子を産むことです」
「…ん??」
なんだこの展開。まさかこのスケベ大魔王、初めて会ったときのあの台詞の続きを言っているのか!?わからない!
とりあえず私は産む気なんてない。またも私の手を擦る弥勒様を叩いた。
「恋人がいなくても、子どもを産む気はまだありません!」
「では、いつです!」
「は?」
「いつその気になるのですか!」
弥勒様にぐっと近寄られて、何も言えなくなる。
うぐ…かっこいいな弥勒様。だけど外見に惑わされてはいけない、弥勒様は女たらしなんだから!
「とにかく!まだ子どもは産まないから!」
「舞様…」
「…そ、そんな目で見ないでよ」
悲しそうな目で私を見つめてくる。自分は悪いことを言っていないはずなのに、そんな気分にさせられる。
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