「どりゃぁぁぁ!」


弱々しい音とともに、羽のある小さい人間が現われる。これも…一応式神?私の能力が全く成長していないような気がするんですけど。


「いや、そんなことない!小さいから偵察用に使えるよね」
「自分の身は守れねぇけどな」
「…」


犬夜叉の言うとおりだわ。
気を取り直して、式神を召喚するための札をポケットのお守りから取り出した。それをじっと見つめ、神経を集中させる。


「新しい技はとりあえずまだいい。とにかくあの…翼が生えたやつ、出てこい」
「名前覚えてねぇのかよ」
「…覚えてるってば!ごめんよ時祢」


そうだ、犬に芸をさせるときに名前を呼んでる人いるし…うん、名前大事だ。試しにやってみよう。


「犬夜叉、犬夜叉、お手!」
「…てめぇは頭に俺の拳を食らいてぇのか?」
「名前呼べばやってくれるかなと、ちょっと期待しちゃいまして…」
「覚悟は出来てんだな。」
「さて、修行再開しようかな」


うーん…。
いつもはどのように式神を召喚していたのかを考えてみた。私は危険な状況におかれると、本来の力を発揮することができる…ってことは、緊張感みたいなものも必要なんだ!


「ってわけで犬夜叉、私を襲え!」
「は?今度は何を言って…」
「舞様、その役なら私が!」
「するなー!!」
「がはっ」


珊瑚ちゃんが弥勒様を飛び蹴りし、地面に横たわる彼は鼻血をどくどくと垂れ流している。吐血もしているような、…気のせいにしておこう。


「さぁ犬っころ、襲って来いや!」
「落ち着け。」


野球のキャッチャーみたいな構えをして挑発する私、珍しく冷静な犬夜叉。なんだか温度差がありすぎるな…。それに気付いた私は姿勢を元に戻した。


「お前、焦りすぎじゃねぇか?だから変なことをしやがる」
「……。」
「もっと地道に、落ち着いてやれ。必要なら修行に付き合ってやる」
「い、犬夜叉…!」


犬夜叉ってさり気なく優しくしてくれるんだよね…いつもは素っ気ないけど、いつもは馬鹿だけど!


「ありがとう犬夜叉!」
「…何で俺の頭を撫でてんだよ!」


殴られそうになって、間一髪私はそれを避けた。なんとなく撫でたかったからしてみたんだけど、やっぱり犬夜叉は嫌だったか。


「ごめんごめん、そんなに嫌だとは思わなかった」
「…気をつけろ」
「はーい」
「話戻すぞ。修行なんだが…霊力とかに詳しい弥勒に教わったほうがいいんじゃねぇか?」
「み、みろ…」


弥勒様…だと…!?
あの、スケベに、教わる…


「無理無理無理です!」
「なんでだよ」
「襲われそうで怖い」
「じゃあ珊瑚にも付き合わせろ」


犬夜叉が親指でさしたほうを見ると、珊瑚ちゃんが飛来骨の手入れをしていた。私は駆け足で彼女に近付いた。


「珊瑚ちゃん、あのね…」
「ん、だいたいの話は聞こえてきたよ。あたしも自分の修行をしながらだけど、それでいいなら…」
「全然いいよ!」
「じゃあ、決まりだね」
「よろしくお願いします!」


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