巫女の刀が私の首から離されることはなく、血は流れ続けた。制服の襟がじんわりと赤色に染まっていく。あたしって、いっつもこんな風に命狙われちゃうんですな。
「あなたに選ばせてあげますよ。このまま一気に首を切り落とされるか、身体を一刀両断されるか。どちらがいいですか?」
「どっちも嫌!」
きっぱりと拒絶してみた。巫女の様子を見ると、彼女は表情を変えることなくこちらに冷ややかな視線を送っている。うあー怖いよー。
「さっさと刀をしまえ」
犬夜叉は手の関節をぼきぼき鳴らしながらそう言った。巫女は目線のみ彼のほうへ向ける。
「…この方を生かしておくと危険なので、ここで私が葬ります」
「私の美しさが危険だなんて…なんて罪な女なの!でははは」
ゴンッ
「お前ちょっと黙ってろ」
近くにあった小石を舞目掛けて思いっきり投げると、それは見事頭に当たった。あいつは意識を失って後ろに倒れこみ水溜まりの中へ。べちゃりという鈍い音がし、巫女の衣服に泥が飛び散った。その女は不快そうな表情で裾を払う。
「菫の生まれ変わりは存在してはいけないのです。邪魔しないでください」
「俺はこいつを死なせたくねぇな」
巫女の注意が俺に向いている隙に、弥勒は水溜まりに埋もれる舞を抱き起こしてその場から離れさせた。
「そもそもなぜ舞様を生かしてはいけないのですか?」
「…菫の目的は、死者蘇生。我が一族の言い伝えには、強力な霊力を持つ術者の生まれ変わりを使えば、それを叶えることが出来るとあります」
死者を生き返らせて、菫という巫女はどうしたいのか。なぜ、生き返らせようとするのか。俺達にはわからなかった。
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