「た…、単細胞」
「一人でやれ。」
つい口が滑ってしまいました。そもそも犬夜叉をべた褒めするっていうのが無茶な作戦だったんだよ!こんちくしょう…
「ふん、単細胞なんかに手伝ってもらわなくてもいいですよーだ!」
「なんだと!?」
激怒する犬夜叉からなんとか逃げて、とりあえず私は川の上流へやってきた。水中で優雅に泳ぐ魚たちを捕まえるために!
「どりゃっ」
バシャ、という水音をたてて川へ手を突っ込んだけれどなかなか魚を捕まえられない。手からすり抜けてしまう。ぐぉぉぉ!だから単細胞に手伝ってほしかったんだよぉぉぉ!!
犬夜叉がいない今、自力で捕まえるしかない。みんなが帰ってくる前にご飯を用意しなきゃいけないんだ!
「やったー!邪見様、捕まえたよっ」
「うるさい!わざわざ報告しなくていいと言っただろ!」
更に上流から聞こえてくる、どこかで聞いたことのある声。おっさんと女の子…?
「あ、いつぞやの感じ悪いちっちゃいおっさんだ」
「お前…!生意気小娘ぇぇぇ!」
邪見とかいうちっちゃいおっさんに声を掛けてみると、奴は私を指してあからさまに嫌そうな顔をした。なによ、こっちだってちっちゃいおっさんなんかに遭遇して嫌だわ!
「わ〜あの時のお姉さんだ!」
ちっちゃいおっさんの横にいる女の子は、太陽くらい明るい笑顔を私に向けてそう言った。ま、眩しい!直視できない…だと…!?
「もしかしてお魚を捕まえていたんですか?」
「え、あ、うん…でもなかなか捕まえられなくて困っているんだよね」
「それなら私が捕まえたお魚をどーぞっ」
「うわ!」
女の子は手に持っている魚を私に差し出した。その魚は活きが良く、びちびちと動いて水を撒き散らしている。
「い、いいの?」
「はい、たくさん捕まえちゃったから逃がしてあげようかなって思っていたんです。どうぞ!」
「ありがとう」
女の子から魚を三匹貰い、それをかごめちゃんのクーラーボックスの中に詰め込んだ。
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