しばらく歩いていると犬夜叉が鼻をしきりに動かし、しかめっ面を見せた。そして立ち止まり盛大なため息を吐く。


「どうしたのかな犬夜叉くん?お腹が空いたのかな?」
「違う、お前じゃねぇから」
「うっわ!あんたのほうが食い意地すごいくせに!」


犬夜叉の背を何度も強く殴っていると、私の目の前でつむじ風が起きた。砂埃も舞って、目を開けられない…。
そしてすぐにそれが止み、いつの間にか目の前には超短い腰巻きを着ける男の子が立っていた。尻尾生えてるし、犬夜叉みたいに牙もある!


「よぉ!久しぶりだな、かごめっ」
「こ、鋼牙くん!」
「脚が綺麗な人だね…何者?」
「あ?」
「舞ちゃん、着目するところがずれている気がするわ…」


え、いや、でも実際美脚だよね?私がそう言うと、かごめちゃんは呆れ顔を見せた。他の皆も苦笑いをしている。


「で、腰巻きがいい感じのこの人は誰?」
「鋼牙くん。妖狼族の若頭よ」
「へー!すごいね!」
「まあな」


誇らしげに相づちを打つ鋼牙。私は彼のその雰囲気から、誰かの面影を思い出した。誰なのかはわからない、だけど誰かに似ている…このむかつく雰囲気が!
色んな人物の顔を思い出してはあれでもないこれでもないと考えている私の横を、赤い者が通り過ぎた。


「てめ…いちいち俺の前に姿を現すんじゃねぇよ、腹立つ!」
「あー?ただ通り掛かっただけだっつの、お前のために現れたわけじゃねぇよ」
「とにかく姿を見せんな!」


ハッ!に、似ている…この鋼牙とかいう奴、犬夜叉と似ているんだ!
一人で勝手にすっきりした私は、喧嘩をし続けるこいつらを無視して自分の世界に飛んだ。素晴らしい妄そ、じゃなくて空想の世界へ―…





「あはーはーはっ」
「舞、オイ!気持ち悪い笑い方すんじゃねぇよ!」
「…こいつ、舞 っていうのか?」
「だから何だよ痩せ狼!」
「ふーん…」


じっと私を見た後、鋼牙は軽く笑って肩を勢いよく掴んできた。それによってこちらの世界に引き戻された私は、目の前に立つ鋼牙の存在に気付く。


「なんでございますか?」
「お前、可愛いな」
「…はい?」
「気に入った!俺の名は鋼牙、よろしくな!」
「さっき聞いたからわかるよ」
「いいな、そのさっぱりした態度!嫌いじゃねーぞ」


何がなんだか…状況が掴めずにいたけれど、鋼牙の次の一言で私は全てを理解した。


「俺の女になれ!」
「…え、えーと、恋人同士になろうって言っているのかしら」
「そうだ」
「私の溢れんばかりの色気にやられてしまったというわけか…」
「痩せ狼!ふざけた事言ってんじゃねーぞ!」


私の肩を抱く鋼牙の手を引き離して一睨みする犬夜叉。いたたたた!ちょ、今あんたの爪が私に食い込んでいるぞ!


「なんだよ犬っころ、お前は舞と俺がくっつく事に文句あるのか?」
「そ、それは…」
「強烈なアプローチ攻撃!この人おもしろいなー」
「相変わらず舞ちゃんは呑気ね…」
「ですね」


私達は、舞ちゃん、犬夜叉、鋼牙くんの三人が繰り広げる喧嘩をただ見ているだけだった。この争いをやめさせようとしてもどのみち無意味ということがわかっていたから。早く終わらせてくれないかなあ。


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