「ま、そーいうわけだからその人間に逃げられちゃ困るんだ。さっさと寄こせよォ」
「けっ!誰がやるかよ」
「命知らずね…ならば力ずくで奪うだけよ?フフ」
「力ずく、かぁ…」
私は心の中で、今自分はすごくモテてるんだなー取り合い合戦かー。とポジティブに考えていた。時祢はその考えを感じ取ったのか、深いため息をついた。
「オラ!」
「ぐぁぁぁぁぁ…」
「ぎゃー!」
犬夜叉が力強く刀を振り回すと、ざっくり妖怪達が斬られていった。グロテスクったらありゃしない。そんな残虐な光景に慣れていない私は、悲鳴が止まらなかった。
「でぇい!」
「うぎょー!!」
「…どりゃ!」
「いぎゃぁぁ!!」
「…うらぁ!」
「ちゃばぁぁぁぁ」
「…」
それ、悲鳴ですか?と時祢に言われてしまうほどのおかしな叫び声に、犬夜叉の力はだんだん抜けていくように見えた。
「黙ってろ!うるせぇんだよ!」
「だって怖いんだもん」
「今さら女振るな!」
あら、ごめんなさい?そうね、私ったら普段は女らしく振る舞わないくせにこういう時だけ…って、
「なんですとー?!」
「本当の事を言っただけだ」
「今日という今日は許さない!」
「上等だ、やれるもんならやってみやがれ!」
私達が喧嘩するのを見て、妖怪達はチャンスとばかりに襲いかかってきた。
だけど私達は言い合いながらも、攻撃、防御をなんとか上手くこなして妖怪達を倒していった。
「終わっ、た…」
「けっ!大した事ねーな!」
なんとか全ての妖怪達を倒すと、緊張の糸が切れた私はその場にへたれこんでしまった。それと同時に時祢の姿が消える。
「なんだよ、だらしねぇな」
「お黙り!これでも怖かったんだからね」
私がそう言うと犬夜叉の表情はなぜか優しいものになって、私の頭をくしゃくしゃと撫でてきた。そしてぽつり、ごめんな、と似合わない言葉を呟く。
なんだか涙が出そうになったけれど堪えて、来てくれてありがとう、と私も呟いた。
そして犬夜叉は疲れ切った私を背に乗せ、皆の元へと駆けて行った。
To be continued.
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