「貴女のおかげで助かった。本当にありがとう」
「いえいえ」
かごめちゃんのおかげで大分回復出来た少女は、正座をして丁寧にお礼を言った。なんだかこの子…
「しっかりした子だな…!」
「てめぇと違ってな」
「何ですって!?」
「傷だらけだね。何かあったの?」
「妖怪に襲われて…必死に逃げてきたんだ」
少女は体に付着している藻をはぎ取り、生々しい傷跡を露にした。所々膿んでしまった部分もある。
「手当てしたほうがいいんじゃない?傷口から菌が入りまくりで大変だよ!」
「気持ちは嬉しいが、結構。これ以上迷惑をかけられないので」
「だけど…」
「では失礼。本当にありがとう」
少女は再び一礼し、足早に去ってしまった。
「かっこいいなぁ…」
「てめぇと違ってな」
「何ですと!?」
「こら、二人とも!」
私たちの間に割って入り、喧嘩を止めようとするかごめちゃん。いや、私の怒りを止めないでくれ!
「かごめちゃん!コイツを一発殴らないと気がすまないのだよ!」
「舞ちゃん落ち着いてっ」
「そもそもてめぇが俺の肉を盗むのが悪い!」
「…喧嘩はそのへんにしておきましょうか」
張り詰めた弥勒様の言葉に、皆動きを止める。何だか森がざわついてきた。
「…何か迫ってくるな」
犬夜叉は刀を構え、真剣なまなざしで近寄ってくるものを待った。どきどきしながら私も何かをじっと待つ。
「うお!?」
「舞!」
突然現われた翼を生やした妖怪に私は捕まってしまっ…、なんでよ!?おーい!
私は連れ去られながらも瞳に涙を溜め、大きな声で叫んだ。私の両手を掴む妖怪の足を一生懸命蹴ろうとするけれど、身体がかたくて届かない…。
「離してよ馬鹿!」
「離したら落ちて死ぬぞ」
「え、ちょ、前言撤回、やっぱり離さないでくださる?」
今自分は両手を掴まれている。このままだと式を呼び出すことができない!まだ初心者だし困ったな、どうしよう…!
「舞ちゃん、大丈夫?!」
「さ、珊瑚ちゃん!」
私を助けようと雲母に乗り追ってきた珊瑚ちゃんの姿が後ろに見えた。ああ、白馬の王子様みたいだ!…違うか!
「本当にごめん、助けてくれると有り難いっ」
「わかってる!飛来こ…」
珊瑚ちゃんが飛来骨を投げようとしたその時。下から何かがとてつもない速さで飛んできて、雲母の腹部に突き刺さった。悲鳴をあげる雲母。
「っ!?」
「珊瑚ちゃん、雲母!」
「ヒャハハハあ〜ばよ!!」
雲母は意識を失い、珊瑚ちゃんと共に落下していく。助けたいけれど私は何も出来ずただ名前を呼び続けるだけだった。
そんな二人にかまわず、妖怪は私を連れて光の速さでどこかへ飛んでいった。
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