「舞ー!」
「犬夜叉…!?」


襖の外からかすかに聞こえる、自分の名前を呼ぶ声。それと一緒に荒々しい足音がこちらに近付いてくるのがわかった。


「菫、神楽、行くぞ」
「ああ」
「なんだ、もう帰るのかよ」


凄まじい風を巻き上げて天井を突き破り、三人は姿を消してしまった。
な…なんだったの?さっきまで起こった様々な出来事を信じられない私は、ぽっかり空いた天井の向こうに見える夜空を呆然と眺めていた。
すると突然左手にある襖が蹴破られ、犬夜叉が現われた。


「舞!大丈夫か!?何があった?」
「流れが早すぎて…しかも私を無視して話進められていたから、よくわからない」
「そ、そうか…怪我はないか?」
「うん。怪我はないけど…」


心配そうに犬夜叉は私の顔を覗き込んできた。…よく考えてみれば、もしもあの時自分が式神を使えていなければ殺されていたかもしれない。


「危なかったのかも…?」
「そうか。悪かったな、すぐ来られなくて」
「ううん…大丈夫だよ、ありがとう。かごめちゃん達は?」
「妖怪が出てきたから倒してる」
「え!?」


自分の知らないところでも、妖怪が出没していたなんて…!やっぱり殺人が起きているのは妖怪の仕業だったのかな。


「一部の従者以外はほとんど妖怪だった。どうやらこの城の奴等は殺されて、何かに利用されちまったらしい」
「そんな…」
「雑魚妖怪は弥勒達に任せて、お前を助けに来たんだ」
「ありがとう…でも大丈夫、もう私も戦えるから!」
「は?どういうことだ」


犬夜叉は私の言っていることの意味がわからないみたいで、変な顔をして聞き返してきた。そりゃ説明しないとわからないよね…!私はさっきまでの出来事を犬夜叉に手短に話し始めた。


「式神を使いこなせるようになったの!それで奈落っていう奴が…」
「奈落?!」


話の途中で犬夜叉は奈落、という単語に反応を示し険しい顔を見せる。


「そうか、奈落が関係していやがるのか…舞。お前、俺達と一緒に旅をして正解だったな」
「え、なんで?」
「俺達の宿敵が奈落ってやつなんだよ」
「!…ん?でもなんで私が…」
「まだわからねぇが、奈落と関わってるって事はろくでもない計画に違いねぇ」


自分の先祖が、ろくでもない妖怪と関わっていてしかも人を殺す側についている。…その事に私はショックを隠せなかった。なんでそんなことになっちゃっているんだろう。


「とにかく弥勒達の所に行くぞ。乗れ」
「あ、犬夜叉。私はこの裂唏に乗るから…」


裂唏を撫でてやると、それは私にすり寄ってきた。すごく可愛くて手触りもいい。


「式神か」
「そう。第一段階の式神みたい」
「んじゃ行くぞ。ついて来い」


そして私達は城内を駆けて外へ脱出した。






犬夜叉と私が城の庭を走っていくとかごめちゃん達四人が見えてきた。大きく手をふり、裂唏に乗ったまま仲間達の元へ行く。


「舞ちゃん!よかった、無事みたいねっ」
「心配かけてごめんね」


私が裂唏から降りると、かごめちゃんが抱きついてきて珊瑚ちゃんは私の頭を撫でた。


「では私も…」
「弥勒、やらない方が身のためじゃぞ」
「…七宝に注意されるとは」




「本当に怖かった…」
「何があったの?」


犬夜叉に説明した時と同じように私は皆に全てを話した。勿論奈落のことも。


「そうか、奈落が関わっていたのか…」
「だけどなんで舞ちゃんを狙ったのかしら」
「わからない。私の先祖様は願いを叶える、とか言ってたけど…」
「そこです。願いを叶えるにせよ、なぜ巫女である方が奈落と?」
「それは私も気になっていた」


清らかで、魔を滅するための巫女さんがなんで邪悪な半妖に?しかも私の先祖…。考えても全くわからない。


「…菫っていう巫女さんに聞かない限り本意はわからないと思うわ」
「あたしもそう思う。今日は宿に戻って休もう」
「そうですね。城の妖怪は全て倒し、城の人々は皆助けましたし」
「行くぜ」


式神も使えるようになったし、生きてまた皆に会えてよかった。菫さんの事はわからないままだけどこれから調べていけばいい。
私は皆にお礼を言って、一緒に宿へと戻っていった。


To be continued.


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