「くそ!早く進みてぇのに…!」
中に侵入した俺達は、無表情のまま襲いかかってくる城の従者達に手を焼いていた。こいつら、まるで魂がない人間みてぇ。
「なんなんだようっとうしい!」
「行く手を阻むってことは、この先に何かあるんだろうね」
「もしかしたら舞様がいるかもしれない」
「けっ!だったらさっさとこいつらをやっつけて進もうぜ!」
俺達は順調に従者たちを気絶させ、城内を駆けていった。
「ここから脱出して、さっさと犬夜叉達に合流しないと!」
足の痛みが和らいできたから、気を取り直して私は考え始めた。
ああ、こういう時に式神の力が使えたらな。自身の無力さに腹が立った。私は仲間に助けられることを待っているだけの人間なのか?…そんなの嫌だ。戦える力がほしい、強くなりたい。
「…うっ、ぐ、!?」
力を強く欲したのと同時に、体の奥から強い鼓動が鳴り響く。
そしてそれにつれて何故か体中が熱くなり、立っていられなくなってうずくまる。すると眩い光が私を包み込んだ。
景色も何もない真っ白な世界で私はまた一人、ぼんやりと浮かんでいた。これ見覚えあるな…
「舞…」
「…だからあんた、誰よ…」
「目覚めよ、舞」
「妖怪に襲われた時にも言われたような気がするんだけど」
「お前がこの時代に来たことを受け入れず、戦うことを拒否したから目覚めなかった」
「…よくわからないけど、とにかく戦える力を頂戴!」
「ではお前に式の操り方を教えよう。第一段階の術、裂唏を唱えよ」
「れっき…?」
言われた通りに唱えると、今度は強い風が私を包みこんだ。
目を開けると、周りには畳や襖が見えた。どうやら今度は和室のようだ。今まで様々な場所に移動したことを思い出す。現代からこの戦国時代へ、城の庭から意味のわからない真っ暗な空間へ、真っ白な世界からこの和室へ。
「瞬間移動の能力でもあるのかな…すげー!」
「あの女、どこ行きやがったんだ」
「誰!?」
「…なんだ、ここにいたのか」
男勝りな女の人は私を見つけると、扇子を口元に当てて不気味に笑った。こ、怖いよー!美人だけど!
「奈落がてめぇを牢に閉じ込めておいたのに。勝手に逃げるんじゃねぇよ」
「い、いやだ、あんな所には戻らない。逃げる!」
大きな声で叫びながらばたばたと和室を走り、襖を開けて廊下に逃げた。
後ろを見ると、女の人は私の行動に対して慌てる様子もなく、扇子を開いてこちらにそれを向けていた。苛立っているらしく、眉間にはしわが多発している。
「逃がさねぇよ」
女の人が扇子をあおぐと私の体は風に包まれ、その人の方へ引き寄せられた。
「嫌だー!」
「殺したほうが楽なのによー」
女の人は自分の髪飾りである羽根のようなものを一つ取る。するとそれは人間を乗せられるほどの大きさに変わり、私を乗せて飛んだ。
「ぎゃー!室内で飛んでる!」
「うるせぇ、静かにしてろ」
強い風を巻き付け、とてつもない速度で私は連れられて行った。
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