「よし、着いたぞ」
「これが骨喰いの井戸?」


すっごく汚い…かごめちゃん、いつもこんな所に入っているの?噂の枯井戸は木製で蔓がはっていてとにかく不気味だった。中を覗くと、昨日私が倒した妖怪と思われる残骸が捨てられている。ずったずたのやつ。


「うげ…気持ちわるい」
「行けよ」
「は?」
「この中に飛び込むんだよ」
「無理無理無理無理!」


全力で拒否する私に、犬夜叉はわけがわからないと言いたいような顔をする。


「さっさと入れ」
「無理!中に妖怪の死体が捨てられていて気持ち悪い…なんであんなやつがこの中にあるのよ!」
「ここは妖怪の亡骸の捨て場なんだとよ。で、何日かたつと亡骸はどこかへ消えちまうらしいぜ」
「…つまりごみ箱?余計嫌だ…」


吐き気が酷くて私は井戸の前にしゃがみ込んでしまった。さっき食べたものが全部口から出てきそうなほど気持ち悪い。おえ。


「ったく、仕方ねぇな…俺が手本を見せてやる!」
「え、あ、犬夜叉!?」


そう言って犬夜叉が骨喰いの井戸に飛び込んだ瞬間、眩い光とともに彼と妖怪の亡骸は本当に消えてしまった。すごい…!呆気に取られていると、再び井戸から光が溢れ犬夜叉は戻ってきていた。


「ま、こんな感じだ」
「わ…わかった、私も入ってみる!」
「おう」


妖怪の死体もなくなったし…飛び込むだけなら簡単だ!


「うおりゃあああ!!」


奇声を発しながら私は井戸に飛び込んだ。


ズダーン!


「う…、ん?」
「おーい大丈夫かー」
「……。」


犬夜叉の声が井戸の中に響く。…私はやっぱり、井戸を通って現代に帰ることができなかったらしい。思いっきり打った鼻をさすり、袴についた泥を払った。そして盛大なため息をひとつ吐く。


「…最悪だ」
「ま、なんとかなるだろ」
「そんな適当な答えじゃ困るんですけどぉぉぉ!」


神様、私はどうすれば私の世界に帰られるのですか―…







「ただいま…」
「あ!みんな、舞が帰ってきたぞ!」


七宝ちゃんが嬉しそうに私に飛び付いてきた。そしてその声を聞きつけた皆がこっちに集まる。


「帰ることが出来なかったのですね」
「…うん」
「可哀相に…さあ、舞様!私の胸の中で泣いてもいいのですよ!」
バキッ「このスケベ法師!」


弥勒様の後ろから珊瑚ちゃんが素晴らしい飛び蹴りを食らわせた。もろに食らった彼はそのまま倒れ、ぴくぴくと痙攣している。


「か、かごめちゃん!弥勒様が…」
「気にしないで。いつものことだから」
「えぇえ!?」
「で、どうするんだ舞」
「犬夜叉…今、初めて私の名前を呼んでくれたね…」
「ん、んなことはどうでもいいんでぃ!」


照れているのか、大きな声で犬夜叉は言った。これ以上いじると犬夜叉が拗ねちゃうだろうから話を戻すことにしよう。


「どうするって言われても…うーん」


ここに来た時に思ったけれど…やはりあの木箱からじゃないと帰ることができないのかもしれない。


「私、こっちの世界に来る前に見た木箱が重要だと思う」
「そうね、やっぱり自分が使った入り口じゃないと駄目かも」
「では、舞よ。犬夜叉達と旅をしたらどうだ?」
「た…旅?」


向こうから来た楓さんに言われ、私は首を傾げる。


「ああ。おそらく舞がこちらに連れてこられた原因は菫という巫女が関係しているのだろう。その者の情報を集めて行けば、自然と帰る方法も見つかるはずだ」
「確かに…」


楓さんの言葉に、その場にいる皆が納得した。だけど情報を集めるといってもそう簡単にはいかないんじゃ…。
楓さんは話を続けた。


「犬夜叉達は宿敵を探す旅をしておる。だから共に旅をすれば、舞が知りたい情報もそのうち手に入るはず」
「そっか…でも、皆は私が一緒に旅をしてもいいの?」
「おらは舞が大好きじゃから構わんぞ!」
「私も舞様が大好」
「あたしもそれがいいと思う」
「私も賛成よ!」
「俺はどーでもいい」


皆の言葉がとても嬉しかった私は、涙をこらえつつも喜んだ。


「みんな…ありがとう!」


相変わらず目を合わせない犬夜叉に、私は睨むのではなく彼の袖を握って笑いかけた。


To be continued.

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