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「ごちそうさま!」
「おいしかったー!」


さて。朝ご飯も食べたし骨喰いの井戸に行ってみたいんだけど…戦国時代の地形なんかわかるはずもない。地図もないらしい。じゃあ…


「犬夜叉」
「あ?」


食べ終わり寝転がる犬夜叉に、スキップで駆け寄って話しかけてみた。行儀が悪い彼の事はあえて触れない。


「骨喰いの井戸に行ってみたいんだけど、案内してくれないかな?」
「ああ…あそこから帰れるか試してみたいらしいな」
「うん、そうそう!」
「いいぜ。食後の運動になるし」


犬夜叉にしては優しい対応。なんだか嬉しくて、笑顔がこぼれた。





楓さんの家を出発する前に、少しお世話になった皆に別れの挨拶をしなくちゃ。わざわざ村の出入口まで見送りに来てくれたかごめちゃん達に私は一礼をした。


「かごめちゃん、珊瑚ちゃん、弥勒様、七宝ちゃん。今までありがとう!」
「はい、私の住所と電話番号!現代にはあまりいないかもしれないけど…遊びに来てね」
「一日しか一緒にいられなかったが…舞の優しい笑顔が大好きじゃぞ!」
「舞様…最後に尻を触らせてください」
「法師様、殴られたいの?…舞ちゃん、こんな変な男にしつこく絡まれたら手加減しちゃ駄目だからね!」


私の手を握る弥勒様に対して、飛来骨を片手に怒りの炎を散らす珊瑚ちゃん。それを見てつい私は笑ってしまった。


「ありがとう弥勒様。雰囲気が和んだよ、…多分。」
「おい。通られるかわからねぇんだから別れの挨拶なんてするなよ」
「私は通られると信じてるし!」
「世の中うまく行くわけねぇだろ」
「うるさい、早く行こ!」







ザッザッザッ…


「ぜーはー…ぜーはー…」
「早くしねぇと置いていくぞ!」
「ふ、ざけ…で!ちょっ…くらい待っ…くれても、い…んじゃな…ぜーはー」
「おめぇバテバテじゃねぇか」
「うるさい!」


私は呼吸を乱しながら歩き続けていた。昨日はほとんど寝ていないし、着物で密林を歩くのなんて慣れていないんだから…ちょっとはゆっくり歩いてほしい!犬夜叉め、女の子の扱いに慣れていないな。


「…はー」


犬夜叉はため息を吐いてからズカズカとこっちに歩いて来て、無理矢理私を背に乗せた。ぎゃぁあぁぁあ!何、何何!?


「ちょ…犬夜叉!?」
「てめぇの歩く速さに合わせていたら、日が暮れちまう」
「いやだー!降ろして!」
「大丈夫だ、体重なんか気にするな。かごめはフツーに乗っているぞ」
「体重とか言うな」


近い、恥ずかしい!この年になって人におんぶされるとは…やめてくれー!犬夜叉の背中を思いっ切り叩いて抵抗する私に、彼はぼそりと呟いた。


「さっさと帰りたいんだろ?」
「…ハッ!」


そうだ、さっさと帰って家族に再会、そしてお風呂に入りたいんだった…!本来の目的を思い出した私は、恥ずかしさなんか気にしないことにした。そして元気よく叫ぶ。


「さっさと走りなさい!そいやー!」
「てめ…!さっきと言っている事全然ちげぇぞ」


犬夜叉は舌打ちをしてから力強く地面を蹴り、森を駆け出した。


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