「楓ばあちゃーん」


楓さんという人の家へかごめちゃんに連れてこられた。…もちろん犬夜叉はあのまま放置だけど。
かごめちゃんは家をしばらく覗き込んだ後、中から出てきた。


「いないみたい…ちょっと探してくるから、この中で待ってて」
「え、行っちゃうの?」
「大丈夫、この家にいれば安心よ。服汚れちゃってるから、この着物に着替えておいて」
「あ…ありがとう」


そう言って巫女さんの袴を私に渡し、かごめちゃんはどこかへ行ってしまった。

とりあえず家に入って着替えたけれど、なかなかかごめちゃんは帰ってこない。…少し寂しくなってきたよ。何も考えずにぼうっと天井を見ていると、誰かが家の中に入ってきた。


「これは美しい…失礼、あなたのお名前を教えてくれませんか?」


家の中に入って来たのは、黒と紫二枚の布をまとう法師さんだった。その人は素早い動きでこっちへ来て跪き、私の手を優しく握ってから尋ねた。…なんだか今、歯がキラーンって光った気がする。


「舞、です…」
「舞様!なんと綺麗なお名前…」


異様に迫ってくるこの人に引きながらも、頑張って笑顔を返した。ど…どうしたらいいのかわからない。ぎゃー!そんなに迫らないで、顔近い!怖い!


「私は弥勒です。見ての通り法師であり、道行く人を助けながら旅をしております」
「な、なるほど…」
「舞様」
「はい」
「突然ですが私の子を産んでくれませんか」
「…はい?」


連絡先を聞くわけでもなく、お付き合いを願うわけでもなく…いきなり大人な申し出。この変な人の言動にドン引きで、私は何も返答出来ずにいた。


ゴンッ「痛っ!」


どうしようかと悩んでいる途中、きりりとかっこつけていた法師さんの後頭部は、突然何かで殴られた。凄まじい音が鳴ったかと思うと見事なたんこぶがコンニチハー。


「なーにしてるのかな?」
「さ、さささ珊瑚…」


後頭部を殴ったのは珊瑚と呼ばれる女の人だった。長い髪が綺麗で目鼻立ちもよく、背筋が伸びていてすごくかっこいい。なんか、もー、惚れそう!


「見たことない巫女さんだね。どこから来たの?」
「あ、かごめちゃんと同じ世界から…」
「え!?」


二人の動きが止まってしまった!それを見て私は、何かいけない事を言ってしまったのかと思いかなり焦った。慌てて言い繕おうとするけれど上手く言葉が出てこない。


「あ、あの、えーと、同じ世界っていうのはその、ええと」
「かごめちゃんと同じ世界…」
「それはすごいですね…」
「かっぷめんってけっこうおいしいよね!」
「…かっぷめん?」


現代で有名なカップ麺を、この時代の人物が知っているなんてすごいな!…ん?いやいやおかしいだろ。


「なんでカップ麺をご存知なんですか?」
「かごめちゃんがよく持って来てくれるんだよ」
「よく、持って来て、くれる?…もしかしてかごめちゃんは現代とこの世界、行き来できるんですか?」
「うん」
「えぇぇええ!!」


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