「とにかく、あなたは誰かにこの世界へ連れてこられたのね。えーと…名前を教えて?」


優しく微笑みかけてくれる女の子を見て、さっきまで疑っていた気持ちは薄れた。それに現代人であるこの子を頼らない限り、私の未来はないと思う。先程とは違い、彼女の語りかけに私は応えることが出来た。


「舞、です」
「じゃあ舞ちゃんって呼ぶわね。私は日暮かごめ。よろしくね」
「かごめちゃん…こちらこそよろしく」


お互いにっこりと笑う。なんだかこの子、安心できるな。…ん?なんだか怒りのオーラを背後に感じる。振り返ってみると真っ先に犬耳が目に入った。


「…てめぇら、揃いも揃って俺を無視しやがって」


そういえばこの人もいた…!と無礼なことを思いつつも、私は犬耳の男の子に向き合った。そしてにこやかに笑う。


「ごめんね、私は舞。好きなように呼んで」
「…じゃ、てめぇ」
「ちょ待てぇぇい!名乗った意味ないから!せめて名前を呼びなさいよ!」
「好きなように呼べって言っただろ。俺は犬夜叉だ」


確かに自分はそう言った…が、勿論「てめぇ」なんて望んでいない!だけど反論しても、犬夜叉は多分屁理屈で返してくるだろうな…。
言い返すのはやめたけれど、私は思いっきり憎しみを込めて犬夜叉へ視線を送った。


「ちょっと犬夜叉、そういうのやめなさいよ」
「こいつが好きなように呼べって言ったんだから、別にいいだろ!」
「…舞ちゃんに失礼だ、って私は言いたいんだけど」
「だから俺の勝手…」
「犬夜叉。」


かごめちゃんの表情と声色が変わり、それを見た犬夜叉と私の背筋は凍る。何が起こるのか私にはわからないけれど、犬夜叉はわかっているみたいだった。彼の額から冷や汗がだらだら流れているのが見える。


「すぅー…」


かごめちゃんは大きく息を吸う。犬夜叉はじりじりと彼女から距離を置きつつも説得しようとした。


「か、かごめ、落ち着け!」
「おすわり」

ズドーン!と凄まじい音。
…開いた口がふさがらなかった…なぜなら、かごめちゃんの一言で犬夜叉が地面にのめり込んでしまったから。ありえないよね?何なの、このパワーは。


「まったく。犬夜叉は懲りないわね、おすわり」
「ぐげっ!」


彼女は両腕を組み、大きなため息をつく。そしてもう一度同じ言葉を口にし、犬夜叉は悲鳴をあげた。かごめちゃんのすごさにただただ驚きました、はい。


「さて、舞ちゃん」


恐ろしい姿を見せつけたかごめちゃんに名を呼ばれ、恐怖のあまり私の肩はびくついた。


「え、どうかした?」
「…す…すごいね…これ」


私は犬夜叉を指してそう言った。地面に埋まり気絶してしまっている姿。しかもかなりの間抜け顔。


「私が『おすわり』って言うと、言霊の念珠の力によって犬夜叉は地面に叩きつけられちゃうの。言霊の念珠っていうのは犬夜叉のあの首飾りよ」
「そんなのあるんだ…」


犬夜叉はかごめちゃんに頭があがらないんだろうな…私はそう思いながら彼を見て、ふっと鼻で笑った。ざまあみろ。


「とりあえず、近くに村があるから行きましょう。妖怪に襲われた時の傷も手当てした方がいいし」
「うん、ありがとう」


自分の体から血が出ている事に、かごめちゃんに言われて初めて気付いた。他に意識がいくといつも痛みを忘れてしまうな…危ない。


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