「というわけでごめんなさい、逃げます。あとは任せた!」


そう言って走り出そうとした瞬間、お腹を何かに掴まれて私の身体が宙に浮いた。…こんなことが出来るのは犬夜叉しかいない。やれやれと思いながら後ろを向くと、巨大な蟷螂の口が目の前に、…ん?私のお腹を見ると、蟷螂の鎌が、……。


「ぎゃあああああ」
「…美味そうなおなご…喰ろうてやるわ…」
「虫コナーズ!虫コナーズ!」
「こんな時にすっとぼけるんじゃねぇ、ばかやろう!」
「犬夜叉、これはボケじゃないんだけど…!ぎゃああ!」
「落ち着いて舞ちゃん、見た目は蟷螂だけど妖怪よ、式神を使って!」
「そ、そうか…!じゃあ、えーと、隱窘鑿匳齔…桐胡!」


まばゆい光と共にキリが現れて蟷螂妖怪を一刀両断。かごめちゃんの助言のおかげで私はなんとか冷静さを取り戻して式神召喚に成功した。妖怪は塵となって消滅し、解放された私は地面へ。怖い怖い怖い!


「危ねぇな…大丈夫か、舞」
「あ、ありがとう!」


本当はかっこよく着地するつもりだったけれど、空中で体勢を変えられずにお尻から落ちていったから犬夜叉に抱き留めてもらう形になった。…恥ずかしい半面ちょっと嬉しい。


「お前、けっこうまともに戦えるようになったじゃねぇか」
「…もしかして褒め言葉?」
「う、うるせぇ!」
「照れているのね犬夜叉くん」
「その上から目線をやめろ」
「わ!」


犬夜叉は拗ねた表情でそう言うと、私を抱えていた手をぱっと離した。重力に従って再び私は地面へ。痛い…お尻ぶつけた!患部を摩りながら立ち上がると、突然耳鳴りがし始めた。それは今までにない酷さで、立っている事がつらいほど。私は思わず耳を押さえた。


「どうした?」
「…、なんだか急に…」
「お、おい!大丈夫か?」


私がうずくまっていると、犬夜叉は背中に優しく手を置いてくれた。顔を上げれば、心配そうな表情の犬夜叉と仲間達が。大丈夫、と皆に言いたいけれど、そんな余裕はない。


「…さっき河原を通った…よね?喉が渇いたから、そこで水…飲んでくる…」
「おい待て、一人で行くのか?」
「すごくつらそうだ。私も一緒に行くよ」
「ううん…、すぐ戻るから待…っていて。ありがと、珊瑚ちゃん」
「…気をつけてね」

|



[ top ]
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -