「…ねぇ、なんでかごめちゃん達はあんなにやる気満々なんだろう?」
「さあ…」
「ちょっと怖いんだけど」
「…奇遇だな、私もだよ」




ふ、あっちのほうで珊瑚ちゃんと弥勒様は仲良く芋を掘っているけど…甘いぜ。


「他人と喋ってはいけない。芋掘りの最中は、埋まっている芋に語りかけるのだ!」
「お前気持ちわりぃぞ」


…犬夜叉なんて無視無視
れっつ芋掘り!

私は蔓を引っ張り、無我夢中で芋を掘った。汗だくになろうが泥まみれになろうが関係ない。なんてったって、今の私は芋掘り王子なのだから!ひゅー!


「…おい、舞」
「ちょ、話しかけないで犬夜叉、芋語りの邪魔をしないで」
「そんなに掘りまくってどうすんだよ。旅をしているから、持ち運びは無理だぜ」
「…!!」


犬っころに現実を突き付けられ、私の手からスコップがするりと抜け落ちた。


「しまったぁぁあ!大好きな芋、サツマイモスイートポテトゥイモイモイモを毎日食べられると思ってたのにぃぁあ」
「ざまーみろ」


よろめいた私は、掘った芋の入った籠を倒してしまった。芋がばらばらと散らばり、私の心はぼろぼろに。な、涙が出そう…。


「どどどどうしよう…これだから現代に帰れないのは嫌なんだ」
「しょーもねぇ理由だな」
「うるさい!」


犬夜叉に当たり散らしていると、背後から何者かが「諦めないで〜!」と叫び声をあげた。びっくりして振り向くと、そこにはもんぺを穿いた泥まみれのかごめちゃんが立っていた。え、ってかなんだかカッコイイんですけど!王子の座を明け渡しちゃいそうだよ!


「舞ちゃん、もし優勝してお芋が余ったら、私が実家に持って帰るから大丈夫よ!その時はよろしくねっ」
「なるほどー…、ってちょっと待って、それ狡くない?かごめちゃんって実は食い意地すごいの?」
「ちっちゃい事は気にしない!じゃ、お互い頑張りましょ」


かごめちゃんはそう言うとガッツポーズを私に見せて、他の場所へ行ってしまった。あ、背負ってる籠にたくさん芋が入ってる…。す、すごい。


「おい。唖然としてるとこ悪いけどな、お前の芋を掘る姿はもっとすげぇぞ」
「え、やっぱ王子の座は私のものってこと?褒めてる?」
「王子って意味はよくわからないが、話が噛み合ってねぇことはわかった」


そう言ってため息ひとつつくと、犬夜叉は弥勒様達のほうへ行ってしまった。そして彼らに何かを話した後、大きな栗の木の下で寝転がっ…、おーい!サボるなー!


「ちょっと!犬なんだから前足を使って掘りなさいよー!」
「舞…誰が犬だ、誰が!何百回言えばわかるんだよ!」
「どう見てもわんちゃんでしょ…」
「いい加減にしねぇとぶん殴るぞ!」
「…ハッ、待てよ?ライバルが減ったのはラッキーだよね…うん、頑張ろっ」
「おいこら無視すんな!」


かごめちゃん(多分食いしん坊)の激励のおかげもあり、やる気を取り戻した私は芋堀りに全てを費やした。


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