「ほら、佳代の分」
「おいしそー!ありがとう」


なんとか無事に学年末試験を終わらせ、犬夜叉と学校から帰る途中。何となくコンビニで肉まんを買って、二人で公園のベンチに腰を下ろした。
付き合い始めて一ヶ月。私達はまだ幼なじみ感覚が抜けなくて、いい雰囲気なんて作ったことがない。だけどこの状況にお互い焦りもなく、毎日のんびりと過ごしていた。


「あ、肉まんおいしい」
「よかったな」
「…ねえ、犬夜叉」
「あ?」
「鼻水出そう」
「…いや、さっさと拭けよ」
「ティッシュをください」
「最初からそう言え」


街頭でよく配っている広告のティッシュを犬夜叉から受け取り、私は思いっきり鼻をかんだ。うーん、寒い、寒すぎる。冬に公園で喋るのはちょっとつらいかも…。身を縮こまらせつつ隣りに座る犬夜叉を見ると、彼は空を見上げたまま肉まんを貪っていた。


「何?UFOでも飛んでいるの?」
「けっ!馬鹿め、UFOは夜に飛ぶんだぞ。こんな真昼間に現れるわけねぇだろ」
「…ああ…うん…そうだねー…」
「なんだその目は」
「いや、なんでもないよ」


色々とつっこんであげたいけど、口喧嘩をしたくないからやめておいた。
…あ、飛行機雲だ。
私がそう呟くと、綺麗だな、なんて犬夜叉らしくない言葉を返された。少しびっくりして隣に目をやると、彼はほんのりと口角を上げてただただ空を見つめていた。


「昔からよくここに来てたよな」
「そうだねー」
「佳代が作ってきた弁当で腹壊したことあるし」
「あ、あれは…砂糖と塩を間違えたのかな?きっとそうだよ」
「そんな単純な失敗じゃねぇだろ!あの時は殺されるかと思ったぞ」
「大袈裟な…!」
「いや、あれは相当酷かった」


犬夜叉は厭味っぽい事を返しながらも私と目が合うと、懐かしいよな、と言って明るく笑った。


「でもね、料理の勉強を始めたの!だんだん上手くなってきているんだからねっ」
「本当か?信じられねぇなー」
「じゃあ今度の日曜、どこかに出掛けようよ。私がおいしいお弁当を作っていくから」
「胃腸薬も忘れるなよ」
「ひどい!」


こんな言い合いもなんだか心地好く感じられるのは仲がいい証拠、なのかな。
お弁当を持ってどこに行こうか。


end.



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