深夜。佳代が突然俺の家に押しかけてきた。なぜか泣き腫らしていて、両手には何かをぱんぱんに詰めた袋を持っている。…これは…酒か?缶や瓶のようなものがうっすら見える。

何かあったんだなと思ってとりあえず家の中へ入れると、ありがとう、と佳代が切なげに礼を言ってきた。…こういう表情に俺は弱い。本当はこんな時間に来られると困るが、それよりもこいつの事が心配だった。




俺は茶を煎れてそれをテーブルに置いたが、佳代は飲もうとしなかった。つーか、あれから一言も喋らねぇし。しかもまだ辛そうな表情をしているし泣き出しそうだし、…どうしたらいいかわからず肩を抱いてみると佳代は身体を預けてきた。


「な、何か、あったのか?聞いてやるから話してみろよ」
「実は…仕事で失敗したの」
「…だからそんなに元気ないんだな」
「上司にすっごく叱られて、失敗した分をやり直して、私は駄目な奴だなーって自己嫌悪に陥って…」
「そんな事ねぇよ。佳代が頑張っているのはわかってる」


俯く佳代の頭を撫でて慰めると、こいつは静かに涙を流して何も言わなかった。




しばらく泣いた後に佳代は頬を乱暴に拭い、俺に向き直って手を合わせてきた。その突然の行動に俺は目をぱちくりさせてしまう。


「実は…犬夜叉にお願いがあるの」
「なんだ?」
「私、酔い潰れたい」


…………。
何を言っていやがる。と真顔で問いたくなったが、佳代があまりにも深刻そうに俺を見つめてくるから何も言い返せなかった。そんな俺に構わず、佳代は自分で持ってきた袋を漁る。そしてそこから焼酎を取り出し、瓶に口をつけてがぶがぶと呑み始めた。お…、おい、中毒になるぞ!?慌てて焼酎を奪うと、佳代に睨みつけられた。


「酔って嫌なことを忘れたい!お願いします犬夜叉!」
「待て、だからってそんなに呑んだら…」
「私はお酒に強いからたくさん呑まないと駄目なの!」
「それは知ってるが、ぐいぐい呑んだらさすがに危ねぇだろ」
「ちゃんとウコン飲んだからっ」
「うわ!」


佳代は俺を押し倒し、しかも馬乗りになって焼酎をもぎ取った。そしてそのまま飲み干してにんまりと笑う。普段は酒に強いくせに、もう顔が真っ赤になっていやがる。…二日酔い大変そうだな。


「ほどほどにしろよ」
「酒は呑んでも呑まれるな?今日は呑まれたい!いえーい!」
「…人の話を聞け!」
「好き!犬夜叉!愛してる!」
「わかったわかった」


こうなっちまったら仕方ねぇ。幸い明日は日曜で仕事は休みだ、付き合ってやる事にするか。気が済むまで呑めばいい。酔い潰れても介抱してやるから、元通り笑ってくれ。


end.




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