「お、おじゃまします!」
「あがれあがれー」


春休み。私は初めて蛇骨のお宅にやってきた。う…、なんだか、ものすごく緊張する!そわそわしながら靴を脱いで揃えると、蛇骨が私の首筋を触ってきた。ぎゃ!って思わず変な声を出してしまってものすごく恥ずかしい。後ろを向くと、にんまり顔をした蛇骨と目が合った。


「な…ななな、何するの!」
「緊張してるなぁと思ってさー、かわいくてつい触っちまった」
「だからってなんで首筋!?」
「いいじゃん減るもんじゃないし」
「私の寿命が減る!」
「あははは!んなわけねぇだろ」


蛇骨は大袈裟に笑った後、こっちこっち、と言って手を振りながら階段を上り始めた。あれ?私の大切なことがまだ終わっていないんだけど…


「蛇骨のお母さんは…?」
「仕事行ってる」
「えっ、お父さんも?」
「仕事」
「お兄さんは?」
「兄貴もー」


な、なんだ。どうやってご挨拶をしようか一晩中考えて、手品も練習してきたのに…、あれ?ということは蛇骨と今、二人っきり…、…え!?一気に顔が熱くなるのを感じた。


「無理だよ!まだ準備出来てないよ!特に今日は駄目!」
「いきなりなんの話だよ…」
「ななななんでもないっ」
「あー、もしかして佳代、今変なこと考えて…」
「いません!!」
「嘘つくなってー」
「ううう嘘なんかじゃ…」
「目が泳いでるぜ」
「もういいの、気にしないで!」





蛇骨の部屋に案内されて入ってみると、なんというか、想像通りの感じだった。全体的に散らかっているんだけど、私の座るスペースを確保するために少しだけ片付けてある。


「飲み物は茶でいいだろー?」
「うん、ありがとう」


手土産に私が持ってきたケーキを頬張っていると、ふと本棚のアルバムに目が止まった。背表紙に「幼稚園から小学校」と書いたシールが貼ってある。これってもしかして…。


「何見てんだ?怪しいもんは隠したつもりなんだけど…」
「ん、あのアルバム、…ちょっと待った、怪しいもんって何よ!?」
「佳代が見るもんじゃねぇぞ?どうしても見たいならいいけどー」
「え、いいの?」
「多分むらむらするぜ」
「…あーなんとなく何なのかわかった、もういいから、うん」
「はははは!…えーと、このアルバム気になるのか?」
「そう、それ。見ちゃ駄目?」
「別にいいぜー、俺めちゃくちゃ可愛いからな。嫉妬すんなよ」
「自分で言うな!」


アルバムを受け取ってぱらぱらめくってみると、そこには確かにかわいい男の子がピースしている写真がたくさん貼られていた。やっぱかっこいい人は小さい頃からきれいな顔立ちなんだな…。…ん?小学校高学年くらいの写真にありえないものがあり、私の手は止まった。


「何これ、男の子に抱き着いて…、…ちゅーしてますね」
「ちゅーしちゃってるな」
「…ちゅーというか、ぶちゅーって感じだよねこれ」
「熱烈なキスだな」
「え…何、蛇骨、なんでこんなことしちゃったの?」
「不意打ちでやった!」
「…男の子好きなの?」
「ああ!でも今は女である佳代を誰よりも愛してるから安心しろ!」


胸を張って自信満々にそう言う彼を見て、思わず笑ってしまった。まあ、今私を好きでいてくれるならそれでいいか。過去は過去だ。


end.




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