初詣でを終え、私たちは寒い街中を歩いていた。なんだかんだ今年も二人で一緒に来られて良かった、と思いながらふと犬夜叉の方を向くと偶然彼と目が合った。そのままじっと見つめられ、なんだか妙に照れてしまった私は耐え切れずに口を開いた。


「今日も寒いね」
「ああ、息が真っ白だな」
「ね!炬燵が恋しいやー」
「…そういえばお前、すげぇ必死に祈ってたけど何を願い事にしたんだ?」
「今年こそは、絶対、絶対、絶対に痩せますように!ってね」
「…無駄な事を…」
「失礼な!」


隣を歩く犬夜叉の背中を思いっきり叩いたら、彼は突然のことに対処出来ずにむせ返ってしまった。わ、ちょっとやり過ぎた。叩いたところを慌てて摩ってあげると、彼は「馬鹿力め」と呟いて私の頭をぐしゃぐしゃに掻き乱してきた。ひ、ひどい!…まあ、おあいこか。何も言わずにまた歩き出す。


「…じゃ、じゃあ犬夜叉は何をお願いしたの?」
「けっ、言わねーよ」
「あ!今年も佳代と仲良く過ごせますように、でしょ」
「それはない」
「ちょっとー!」
「とにかく、願い事を人に教えたら叶わないらしいから言わねぇ」
「えっ、そうなの?…ん?じゃ、じゃあ私の今年の体重は…!」
「むしろ増えるかもな!」
「嫌だー!」


ありえなくもない、…というか本当になりそうな事。つい私は俯いてしまった。すると犬夜叉は笑いながら私の頭を撫でて、落ち着け、と宥めてきた。さっきとは違う優しい指先を感じ、そっと見上げてみる。


「太ろうが痩せようが、佳代は佳代だろ」
「そ…そうだけど」
「俺の気持ちは変わんねぇから」
「え、え、…え!?」
「なんだよ」
「ううう嘘だ、犬夜叉がそんな事言うなんて…明日豪雪だ!」
「てめぇ…」


本当は嬉しかったけど、恥ずかしすぎて素直に受け止められない。…犬夜叉、気を遣ってくれたのかな…、や…痩せよう。


「…ねぇ、やっぱり犬夜叉の願い事って、今年も私とらぶらぶ…」
「黙ってろ!」



end.



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