「佳代ー、俺と手合わせしようぜ」
「佳代!俺と遊ぼうぜー」


黄色のタンポポが咲く野原の中。蛮骨と蛇骨は私をはさんで座り、左右から腕をひっぱってくる。痛い、けど、私は今忙しいから無視無視。


「なあなあ佳代〜」
「おい佳代、無視すんな」
「そうだぞ、何か言えよな!」
「…じゃあ、言わせてもらうけど…黙っててくれる?」
「…」


私の冷たい発言に、言葉を失う蛮骨と蛇骨。ここまできっぱり言わないと、二人の行動は止められないから仕方ない!


「じゃ…蛇骨、どっか行けよ。佳代が疲れるだろ」
「えー!?俺は佳代を癒してんだよ、兄貴がどっか行けよ〜」
「うるせぇ、生意気だぞてめぇ!」
「兄貴、これだけは譲れないぜ!」
「…」


そんな二人の口論に口出しをしないで、私は黙ってあるものを作り続けた。可愛いのをあげるために!


「佳代!お前はどっちと一緒にいたいんだ!」
「…え?」
「兄貴に気をつかわなくていいからなっ」
「俺だよな、佳代!」


期待に満ちあふれたまなざしを、私に向けてくる二人。私はしつこく話しかけてくる蛇骨と蛮骨に「どうでもいいから」と吐き捨てた。


「ど…どうでもいいのか」
「ひでぇよ佳代!」
「どこが?」
「佳代は俺が嫌いなのか」
「別に…」
「んじゃー俺はっ」
「別に…」


二人の問い掛けを適当に流し、作業を続ける。蛇骨はそんな私の私の左腕をぎゅっと握って話しかけてきた。


「ま…まあいいや!佳代、今日は俺と二人でいようぜっ」
「邪魔だ蛇骨!佳代は俺と一緒にいたほうが楽しいんだよ!」


蛮骨は蛇骨の頭を殴って私から引き離し、彼を鋭く睨んだ。さり気なく私の肩に手を回しているから払いのけておく。


「何すんだよ大兄貴!」
「てめぇが調子に乗るからだろ!」
「…」
「大兄貴は権力を悪用しすぎ!」
「てめぇはなれなれしく佳代に話しかけすぎだ!」



「できたーっ!」
「ど、どーしたんだよ」


急に大きな声を出した私に、ふたりは間抜けな顔を見せた。いけないいけない、嬉しくて思わず叫んじゃった。


「冠!二人にあげるために作ってたの」


両手いっぱいにたんぽぽの花冠を持って二人に見せる。きちんと、三つ作った!にこにこ笑っていると蛮骨と蛇骨の顔も優しくなっていた。


「はい、あげるっ」


私はそう言って蛮骨と蛇骨の頭にふんわりと冠をのせた。黄色の可愛い冠。これ、作るの楽しいしなんだか幸せな気持ちになるんだよね。


「…お前、これを俺のために一生懸命作ってたのか」
「大好きだ!」
「きゃぁあ!!」


嬉しさの表現が大袈裟な蛇骨が、私の後ろから抱きついてきた。予想外の行動に私はまた大声を出してしまう。


「てめっ調子に乗るんじゃねえ!離れろ!」
「佳代は俺の女だ」
「ちげぇよ!」


必死に私から蛇骨を引き剥がそうとする蛮骨。う、蛇骨の腕がきつく首に絡んでるせいか、息苦しくなってきた。ぐ、うぐぐ…やめて!


「苦しんでるだろ、やめろ!」
「へへ、その顔そそるぜ、佳代…」
「なっ…離しやがれ蛇骨ー!」


私があげた花の冠は私達の頭から舞い降り、日だまりの中そよ風に吹かれていた…。ああ、せっかく作ったのに…、いい加減にしろバカ!




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