部活からの帰り道、私はきれいな夕焼け空を見ながら歩いていた。一日、すごく充実してたなぁって思いながら。


「…あれ?」


二十メートル程先に、二年の時に同じクラスだった親友のかごめの姿が。三年生になってから病弱になってしまった彼女を見掛けるのは久々。
なんだか嬉しくて、私は大きな声で呼び掛けながら走り寄った。


「佳代?久しぶりー!」
「久しぶりね!会えて嬉しいわ」
「私もよー」


私達の家は近いから、肩を並べて歩き始めた。私の近況を話し、かごめは?と聞くと、彼女は曖昧な笑顔をみせた。


「えーと、あ、私、病気で寝込んでたから特に何も変わりないわよ」
「そうなの、大丈夫?風邪?」
「えっと…つ、痛風…かな」


痛風…。かごめも色々大変なんだなって思いながら、なんとなく空を見上げた。すると夕焼けの中を赤い物体が素早く過ぎ、目の前に落下…じゃなくて、着地した。


「かごめ、早く帰るぞ!」
「きゃぁぁあ!ちょ、っと犬夜叉、なんで来てんのよ馬鹿!」
「てめぇの帰りが遅いからだろ」


いきなり現われた赤い着物を纏う銀髪の男の子が、すごい剣幕でかごめを怒っている。

え、なに?早く帰れ、って…。かごめにお兄さんはいないはずだけどな。着物着てるし頭にバンダナ巻いてるから、日暮神社のお手伝いさんとか?


「ごめんね、佳代。これは犬夜叉。私の友達というかなんというか…」
「あ、私、佳代です。初めまして」


軽くお辞儀をして犬夜叉さんのほうを見ると、興味なさそうに「ふーん」と返された。…なんか、感じ悪い。迎えに来たってことは、かごめとけっこう親しい関係なのかな。

そして私たちは三人で歩き出した。カラスの鳴き声が遠くから聞こえる。何を話したらいいのかわからず、しばらく沈黙が続いた。


「それじゃかごめ、お大事にね」
「ん、ありがとう。またね」
「ばいばーい」


家に着き、二人に手を振りながら私は家の階段を駈け登った。しかし突然、猫のぶよが足元に現れ、私はびっくりして階段を踏み外してしまった。


「あっ佳代、危ない!」


落ちる、と思った。ぎゅっと目を瞑ったけれど何も衝撃はない。そっと瞳を開き下を見ると、私の身体は浮いていた。


「…ったく…」
「え、あ、ご、ごめんなさい!」


私は犬夜叉さんに抱きかかえられ、なんとか怪我せずにすんだみたい。でも、咄嗟に私を助けてくれたなんて…ちょっと感動。


「あ、ありがとうございます!重いですよね、ごめんなさいっ」
「いや、むしろ軽い」
「へ…」
「怪我は無さそうだな」


こ、れは、少女漫画とかでよくある展開よね。こーんな状況で王子様に優しい台詞を言われた主人公はどきどきして恋に落ちちゃうっていう、ベタな話!…私は絶対そんなものに引っ掛からない、はず。
彼から降ろしてもらって、心臓の鼓動が速くなっていたのは気のせい。


「犬夜叉ナイス!佳代、大丈夫だった?」
「あ…うん。お陰様で…」


ちらっと犬夜叉さんを見る。無愛想な人だと思ったけれど、案外優しいのかもしれない…なんて思いながら。


「犬夜叉さん、本当に、ありがとうございました」
「…それやめろ」
「え?」
「呼び捨てで構わねぇし、敬語とかいらねぇ」
「…了解」


ぎこちない返事をしてしまった。私は何故だか、犬夜叉のその言葉が嬉しくてたまらなかった。だから余裕のある態度なんて見せられない。


「佳代、今度こそまたねー」
「うん…二人ともまたね!」


かごめは姿が見えなくなるまで私に手を大きく振ってくれた。一方犬夜叉は、こちらに背を向けたままの状態で、手をひらひらと振る。
私は二人が行ってしまったのを確認し、軽い足取りで家へ入った。









「…あいつ、かごめとどういう関係なんだ?」
「大切な友達よ。…どうしたの、急にそんなこと聞くなんて」


現代にいるわたしの友達に、犬夜叉が興味を示すなんて思わなかった。驚くわたしに、犬夜叉は更に信じられない事を聞く。


「…また会えるか?」


なにこいつ、きもちわる、頭打った!?…そう思ったけれど、からかいたいという気持ちの方が強い。わたしはにやにやしながら犬夜叉を肘でつついた。




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