花火と涙 | ナノ


「負けたな」
「本当にな」

夜。
ライオコット島がイナズマジャパンの優勝ににぎわっているそこから少し離れた場所。
ゴーシュは俯いて顔を上げないウィンディの頭を撫でていた。

「強かった。とても」

コクリと頷くウィンディ。色素の薄い髪の毛が流れた。

「あんな素晴らしい戦いが出来たんだ。悔いは無いな」
「ああ、全く無いさ。寧ろ清清しいぜ」

ゴーシュはウィンディを見た。
その弱弱しい姿に、やはり我慢なんて出来なかった。

「じゃあ、なんで 何でウィンディは泣き止んでくれないんだ」

ぎゅ、とウィンディを抱きしめる。
ウィンディも嫌がることなくゴーシュの背中に手を回した。

「世界には、俺より速い奴がいた」
「ゴーシュより、強いFWがいた」

そう言って勢いよく顔を上げた時のウィンディの泣き顔を一生忘れられそうに無いとゴーシュは思った。
その涙が今まで見てきた石や蝶や何よりも綺麗だったからだ。
それを絶える事無く溢れさせる長い睫毛に縁取られた大きな瞳もまた同じ感想を彼にもたらすには充分だった。
ウィンディはしゃっくりあげながら言葉を続けた。

「清清しいのに、ここにぽっかり穴が開いたみたいだ」

そう言って自分の胸を撫でる。
ゴーシュは「お前だけじゃない」とそれだけ言ってまた彼を抱きしめた。

「でも、これで終わりじゃない」

不安げな表情でゴーシュを見上げるウィンディ。
時々上がる花火の光に照らされ輝く涙は本当に綺麗だとゴーシュは思った。

「次がある。俺たちはまだ終わってない。次はあいつらより速くなれ」
「っでも」
「俺は世界一のFWになる。お前は世界最速になればいいんだ」
「ゴーシュ…」

ゴーシュは自分の手をウィンディの自分の胸を撫でている手に重ねた。
そして小さい子をあやすような優しい声で言った。

「こんな小さな穴、俺が直ぐに埋めてやるから
 だから泣くな。」


ありがとうな、そう言って笑った彼から再び涙が溢れるのはもっと先の未来の、
最高の嬉し泣きであってほしいとゴーシュは思った。
花火がまた一つ、彼らを照らした。







花火と涙





ゴーウィンいいですよね…

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