風邪引きラバーズ | ナノ



「今すぐここでキスがしたい」



グラウンドでのシュート練習中に豪炎寺修也によって俺に爆弾が投下されたのは少し前。


俺はいつものように後輩たちの面倒をみながら吹雪との合体技に磨きをかけていただけだ。ただ、それだけ。

「今日は一段と綺麗だな風丸。」
「…は」

豪炎寺がいい笑顔で俺に話しかけてきた。

「大丈夫か豪炎寺?いつもの3倍くらい気持ち悪いぞ?」
「唇もいい色だな」

前言撤回、5倍は気持ち悪い。
そうこうしているうちに回りに皆が集まって来てしまった。

「何してるんだ風丸?」
「それが…っひゃ!?」

俺が幼なじみと話をしようとした途端、豪炎寺が俺を抱き締めた。もともとこいつは俺には甘えたなのだ。
こういうことだって日常茶飯事だし俺にだけ甘える豪炎寺が俺だって好きだ。
だが今は部活中。周りの視線が痛い。特に一年のが。

「ちょっ…何してるんだよ豪炎寺!?」
「他の奴なんて見なくていいだろ」
「どうしたんだよ一体…」

円堂は何がおもしろいのか笑っているし、一年はガン見だし、吹雪は染岡を探しに言ったんだろうな、居ない。
いい加減恥ずかしいので無理矢理ひっぺがすと案外簡単に腕が離れた。
いつもならどんなに力を込めてもビクともしないのにだ。
不思議に思って豪炎寺を見ると、なんだかぼーっとしている。
よくよく観察すると、つり上がった黒い目は潤んでいるし、顔が赤い。
少し情事中のことを思い出したのは内緒だ内緒。

「…豪炎寺」
「お前が欲しい」
「風邪だな」

馬鹿らしい返答を無視して言葉を続けると、豪炎寺は首を横にふって、
それから倒れた。しかも俺の方に。
必然的に抱き締める形で尻餅をつくと豪炎寺がひとこと。

「風邪じゃない…」
「嘘つけ」

医者の子だろうにどうしてそんなところで意地を張るんだ。
気がついたら豪炎寺の手が俺の腰に回されていた。
そのままガッチリホールドしたまま豪炎寺は目を閉じた。
仕方なく円堂に保健の先生を呼んでくれるよう頼んで、俺は愛しい甘えたさんのつんつん髪で遊ぶことにした。
今日学んだことは2つ、
ひとつめは風邪をひいた豪炎寺はいつもの5倍気持ち悪いってこと。
ふたつめは、
やっぱりそんな豪炎寺も大好きだってこと。




(風邪引きラバーズ)





インフルにかかって暇すぎたので風邪引き文を…。
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