君の手を取り目を閉じる | ナノ






なんというか、豪炎寺には余裕がある。
風丸はつねに流されっぱなしの自分に溜め息をついた。


「溜め息をつくと幸せが逃げるぞ。」
「はあ、お前がうらやましいよ…」
「ほらまた、ってうらやましい…?何がだ?」
「そういうところがだよ!」
「?」


何故そんなに余裕があるのか
そう問うと豪炎寺は一瞬驚いた顔をして、少し照れくさそうに言った。


「余裕なんてないさ」


豪炎寺のその言葉に、今度は風丸が驚いた顔をする番だった。
何を言っているんだコイツは。
今の返答すら、風丸には大人な返事だな、と感嘆してしまうほどである。
なのに余裕が無いだって?
すると、豪炎寺が風丸の手をとり、その白い指に自分の指を絡めた。
そして困惑する風丸を見つめて呟いた。


「余裕なんて、ない」
「!」
「お前のことを考えるだけでこんなにもドキドキしてる。」
「豪炎寺、」
「本当に、余裕なんて無いんだ」


かっこ悪いから秘密にしてたのに、と笑む豪炎寺が新鮮で、風丸はつい笑ってしまった。


「豪炎寺も、オレにドキドキとかしてくれるんだな」
「あたりまえだろ…お前以外に何がある」
「またそうやってはずかしい事を…絶対に余裕綽々だろ!」
「だから、そうやって照れる仕草とか笑い方とか声とか…全部にオレはドキドキしてる!!」
「っ、…え…」
「あ…」


聞いたのは自分なのに、風丸は唖然として、それから顔を真っ赤に染め上げて顔を隠そうとした。
だが豪炎寺が繋いだ手を離さなかったので、願い叶わずバランスを崩してしまった。
コンクリートの床の冷たさを後頭部で感じながら見上げると、同じく顔を真っ赤にした豪炎寺と目が合った。


(本当に、オレと何にも変らないんだなあ)


サッカー界の伝説だの天才エースストライカーだとか呼ばれるそいつは、サッカー初心者の自分からしたら
遠い異国の人物で。そんな奴と、こうやって同じ感情を共有できるという事実に対する実感が、これといって沸き起こらなかったのだ。


「豪炎寺もそんな顔するんだな」
「だから俺もいっぱいいっぱいだって」
「分かったよ」
「俺はお前が大好きで」
「うん、俺もだ」
「お前以外見えなくて」
「うん、」
「ちょっとのことでドキドキだってするさ」
「うん」


お互いがしっかり繋がった気がして、無性に幸せだった。
風丸がふと気づくと、それはいつものキスをするムードで、
やっぱりそのムードにのせられた豪炎寺が風丸の手をぎゅっと握る。

真っ暗になった世界の中で、確かな幸せを受け取った。






(君の手を取り目を閉じる)














やっぱり豪風が一番好き!
生き甲斐です。



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