君との夏は涼しいね | ナノ
真夏の午後。薄暗い部屋、ガンガンに冷房を効かせた部屋の中。



「君の髪が、好きなんだ」


そう言って俺を涼しげな目でただ見つめるガゼルに俺は言ってやった。


「なら引きちぎってもって行けば良いさ」


するとガゼルは不機嫌そうな顔になってめんどくさそうに言うのだ。


「冗談はよしてくれ。私はそこまで狂ってなどいない」
「だよなぁ」
「わかっているならわざわざ言わないで欲しいね」


そういいながら俺を引き寄せるもんだから俺はガゼルに向かい合う形で膝の上に跨らせられた。これが結構恥ずかしい。
ねぇ、とガゼルが俺を呼んだ。
下から覗く、普段は何も映そうとしないその瞳が、いまはしっかりこちらを見ている。


「もし私が君の返答どおりの行動をとったらどうするつもりだったの?」


ガゼルにしては珍しい感情的な声色。
俺も真剣な顔を作る。


「短髪も似合うと思うし」
「気違いが」


はあ、と溜息をつくガゼルの首に手を回して俺は言う。


「お前にならやっても良いって。そういう意味」
「違う。」
「何」


…が、と続けようとしたが生憎ガゼルが俺を抱き締めてそのまま腰掛けていたベッドにダイブしたのでうわ、という情けない声しか出せなかった。


「私は君の一部だけを見ているのではない」


風丸が全部欲しい。そう言ったガゼルの滅多に見せない情熱的な目にゾクリとした。
氷、そう形容するのがピッタリなその目が愛しくて、でもそこに写るはずの自分の間抜け面がぼやけて見えないのは一体どういうことだろうか。
不安を押し隠すようにガゼルの名を呼んだ。


「ガゼル…?」
「そうか…私は風介というんだ」
「ふうすけ…?」


私の本当の名前。そう告げられて漸く氷に映った自分を認識できた気がした。


「涼野風介と言うんだ」
「すずのふうすけ…綺麗な名前だな」
「君とおそろいなのはいい。でも夏らしくて好きじゃない」
「なんだそれ」


お互いフフッと笑いながら触れるだけのキスを繰り返した。
風介がゆっくりと舌を捩じ込んでくる。
その時ちらと見えた氷が熱を帯びていた。
その熱に脳が犯される直前、真夏に外で遊びまわる風介を想像してみた。
思わず笑ってしまった俺を見て怪訝そうな顔をした風介に「今度一緒に蝉獲りにでも行こうか」と囁いた。
風介はゆったりと笑んで頷いた。












涼野風介って夏生まれだよね。
私も夏生まれで、名前の由来を聞いたら「糞暑かったから『涼』って字を入れたかった。
と言われたのを思い出して。
実は晴風より先に出来てたとか。
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