海風 | ナノ
「可愛い」


そう言って綱海は風丸にキスをした。

別に付き合っているわけではない。
お互い、なんとなく、この空気が好きなのだ。
その空気を乱そうとも壊そうとも思わない風丸は今日もいつもどおりの一日を終
えるはずだったのだが。

風丸は目をぱちくりとして何が起こったのかわからない、そんな表情をしていた。
綱海はいつもの性格からは想像もつかない真剣な、熱っぽい表情でいうのだ。


「やっぱ無理だ。このままなんて耐えれねぇよ」

「なに、」

「好きだ。風丸が好きだ。」


まっすぐ視線を射止められそう言われると風丸はじわじわと赤面し、うつむいてしまった。


「本当は初めて見たときから惚れてたんだ」


風丸は綱海の一言一言が自分の心拍数を高めていくのがはっきりわかった。
でも自分は男だ。どう応えたらいいのか。
風丸の言わんとしていることがわかったらしい綱海は「関係ねぇ」とだけ呟き風丸を抱き締めた。
その温度が心地よくて、思わず体を預けてしまった自分に風丸は自分で驚いてしまった。
風丸はどうすればいいか分からず戸惑いがちに綱海をみた。


(う、お・・・)


それが綱海には丁度上目遣いに見えてしまってドキリと高鳴る鼓動を抑えられずにいた。
ほんのりと赤い頬が余計に風丸を色めかせていて。


「おまえ自身を好きになったんだ。男だろうが女だろうが好きなのに変わりはねえ」
「っでも…っ」


その後風丸が何を言おうとしたのか綱海は知らない。
何故なら風丸の口は綱海によって塞がれていて、それがまた風丸は心地よくて拒否できなかったのだ。
しばらくして二人の口が銀の糸を引いて離れる頃には二人とも熱を帯びた瞳でお互いを見つめあっていた。


「まだ、よくわから、ないけど」
「ん?」


ぽんぽんと頭を撫でながら綱海は風丸が紡ぐ言葉を待っていた。


「キスは、気持ちよかった」
「〜っ…かっわいいなあお前はあああ!」


風丸があまりにも可愛らしいことを言う物だから綱海はまた風丸をぎゅうっと抱きしめた。
今度は風丸も綱海の背中に手を回す。
次視線が交わると、また口を重ねるのだろう。
ぼんやりとそう思った風丸はゆるりと顔をあげた。




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